93号 古文書返却関連の聞き取り調査を実施

守る―保全活動

12月28日、仙台市内のS家で聞き取り調査を行いました。宮城県北部の旧家の御子孫である同家では、数十年前に大学の研究者が史料を借用したまま未返却になっているということでした。11月13日に開催したシンポジウム「歴史遺産を未来へ」での報告をきっかけに、親戚の方を通じて事務局にお問い合わせをいただき、訪問調査を行うことになったものです。

史料の貸借が数十年前ということで、詳細な経緯が分からない部分もあるため、該当の史料については継続して情報を集める旨をお伝えいたしました。一方、それ以外にも多くの古文書を所蔵されているとのことでしたので、それらについては宮城資料ネットで保全の対象としたいことを申し入れ、御了承いただきました。まず仙台にお持ちの資料を借用して撮影・整理した後、来春以降に本宅に所蔵されている分の保全にあたることになります。合わせて、S家の御親戚の中にも、研究者に史料を貸したまま戻ってこないというお宅があるとのことでしたので、そちらについても情報をご提供いただくようお願いいたしました。

Sさん御夫妻からは、借用があった当時から、最初に研究者に貸した史料がなかなか戻ってこないのに再度貸すのかと心配していたが、不安が的中してしまった、最近になって先祖の事に興味が出てきたが、歴史を調べようと思っても、史料が持って行かれてしまったので調べることができないというお話しがありました。

研究者による史資料の未返却は、なにより所蔵者ご自身が自分の家のことを知る、学ぶという当然の権利を奪っている、という深刻な問題があることを認識させられました。歴史研究者に対する所蔵者や地域社会の信頼回復なくして「地域と連携した歴史資料保全」はありえません。現在の歴史資料保全活動に携わる立場として、出来る限りの対応を続けていきたいと考えております。

今年一年も、多くの皆様の御理解と御協力により、実りある歴史資料活動を行うことが出来ました。あつく御礼申し上げます。
皆様どうぞよいお年をお迎えください。