1 事業成果の概要

東北地方太平洋沖地震の発生から8年が経過したが、東日本大震災で被災した文書などの応急処置を継続して実施した。クリーニングには市民ボランティア、さらには全国各地の大学の学生からの支援を得て行った。デジタル撮影については市民ボランティアの作業、さらには東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門からの支援を得て実施した。
歴史資料の救済については、東日本大震災復興事業での建物撤去にともなう緊急救出活動を実施した。あわせて、個人所蔵者からの依頼に応じた保全活動を実施した。また、西日本豪雨、北海道胆振東部地震に際しては、現地の関係者に活動資金や情報提供の支援を行った。
広報普及事業については、石巻市での講演会など郷土史の普及を通じた被災地支援を行った。また、国会での参考人陳述、さらには日本学術振興会やユネスコ本部でのシンポジウムにおける講演などで、国内外に普及を行うことが出来た。
運営面では、運営委員会を定期的に開催し、活動状況の共有を図った。また理事長の交代に伴い関係機関との情報共有を行った。データ保管などのためNPO向けIT支援プログラムを利用し、これまで撮影した古文書画像データの安定した保管と情報共有のための環境を整備した。

2 事業に関する事項

(1)歴史資料の救済・保全のための事業

①被災歴史資料の保全作業

ⅰ. 東日本大震災に伴う保全活動
A 市民ボランティアによる修復活動
東日本大震災での被災歴史利用への対応を継続的に実施している。あわせて、個人所蔵者などから依頼のあった史料へのクリーニングを実施している。今年度は新たに参加した市民ボランティア・学生により、概ね毎週月曜日、週1日程度の作業を実施した。
*2018年度のボランティア作業
・日時 2018年4月9日~2019年3月25日(毎週月曜日)
・作業実施日数: 31日
・参加人数  : のべ332人(1日平均11人)

・登米市・N家 ふすま下張り文書取り出し(所蔵者からの依頼)
解体・はがし・整理・撮影(ふすま3点のうち3点)
・一関市・O家資料(2013年度、東日本大震災での救済)
ナンバリング・クリーニング・整理(段ボール68箱のうち37箱)
・塩竈市・I家 ふすま下張り文書取り出し(2017年度家屋解体に伴う救済資料)
(ふすま12点のうち3点)
・石巻市・雄勝町某家 屏風下張り文書取り出し・水洗

ⅱ. 緊急搬出
A  石巻市・N家での歴史資料レスキュー
2018年10月26日、東日本大震災復興事業による防潮堤建設のため取り壊されることになったN家から、江戸時代の古文書、書画および近代資料の緊急搬出を行った。資料は石巻市文化財保管庫に一時保管されており、2019年2月10日には、石巻市教育委員会文化財課との共同で、同所にて第一次の概要確認調査を実施した。

ⅲ. 他地域での大規模災害への支援
A 西日本豪雨への対応<
a. カンパの募集
2018年6月28日から7月8日にかけて西日本一帯で発生した豪雨で被災した歴史文化資料の救済・保全活動に取り組む団体への支援としてカンパを募集した。宮城資料ネットから緊急支援金30万円を提供するとともに、カンパの呼びかけに応じた9名 1団体からの80,720円を、歴史資料ネットワークを通じて送付した。
b. 支援物資送付の仲介
7月17日に仙台市博物館普及室より、東日本大震災の対応時に使用した被災資料への応急処置関連の消耗品類の提供が可能である旨、事務局に申し出があった。被災地の関係者に照会し、岡山県立美術館を通じて岡山史料ネットへの支援物資の送付が行われた。

B  北海道胆振東部地震への対応
2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震への対応として、北海道在住のNPO会員を通じ、支援の申し入れや、被災対応に関する情報提供を行った。

②歴史資料の撮影作業

a 市民ボランティア2名による撮影作業では、以下の史料を撮影した。

・仙台市・S家文書 194点(ファイルボックス2箱) 完了
・石巻市・O家 44点(ファイルボックス1箱) 完了
・栗原市・N家文書(未了)
・登米市・N家ふすま下張り文書(未了)
・塩竃市・I家ふすま下張り文書(未了)

b 東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門の協力により、以下の史料を合計約46000コマ撮影した。

・栗原市・N家文書(仙台藩伊達家重臣)
・栗原市・O家文書(仙台藩重臣遠藤家家臣)
・栗原市・A家文書(近代の宿泊業関係)
・石巻市・K家文書(仙台藩伊達家重臣)
・石巻市・S氏所蔵史料(コレクション資料)
・東松島市・A家文書(地域文化人)
・加美町・N家文書(近代経営、東北大学関係)
・涌谷町・H家文書(涌谷伊達家家臣)

③ その他の救済・保全活動

① 個人所蔵者方での資料救済活動
ⅰ仙台市・S家資料の保全活動
所有者の依頼により、仙台市のS家に所蔵されている旧仙台藩士関係資料および近代の書画、台湾関係資料の保全活動を実施した。概要確認および一部資料の撮影を実施した。
ⅱ涌谷町・H家資料の保全活動
所有者の依頼により、仙台市内のH家に伝来した旧涌谷伊達家家中の関係資料のデジタル撮影による保全活動を、宮城資料ネット事務局および上廣部門の協力を得て実施している。(2018年度未了)
ⅲ丸森町・O家文書の保全活動
11月23日、公益財団法人日本教育公務員共済組合宮城支部奨励金による活動として、古文書資料のデジタル撮影および保管容器の交換による環境改善を実施した。参加者は7名であった。
ⅳ石巻市・E家文書の保全活動
2003年7月の宮城県北部連続地震での調査対象となった、近世・近代の地域有力者の家柄である同家の関係資料について、東北大学の大学院生と協力する形で、デジタル撮影などを実施した。
ⅴ大船渡市・S家文書の保全活動
歴史資料ネットワークおよび京都造形芸術大学歴史遺産学科と連携して、大船渡市S家文書のクリーニング・撮影作業を実施している。今年度は、歴史資料ネットワークにより撮影作業が進められている神戸大学保管分のうち約100点の写真撮影作業および約50点の古写真洗浄作業を実施した。

② 古文書資料返却事業
2018年度は現所蔵者への返却は行えなかったが、あらたに1件の現所蔵者が判明した。現時点での返却・所蔵者確認の状況は資料1-④の通りである。(表省略)

③ 一点目録の作成

ⅰ. 事務局担当分
事務局での作業として、以下の作業を実施した。

会員ボランティアの作業として、以下の文書について手書きでの目録作成を実施した。
・栗原市・N家資料  約1万点(完了)
・東松島市・A家資料 約2000点(継続中)(64箱中34箱まで終了)

ⅱ. 東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料研究部門からの支援

・加美町・M家文書(江戸時代の商家) 73件
・南三陸町・E家文書(江戸時代の村役人) 100件

(2)歴史資料の所在確認のための事業

地域単位での所在確認調査は、震災対応優先のため今年度も実施しなかったが、(1)で対応した個人所蔵者3件、および関連情報としてもたらされた所在情報、合計4件を収集した。

(3)広報・普及事業

単独での主催、および全国の歴史資料保全関係者との連携による以下の活動を実施した。

①歴史資料保全のための講演および講演会

ⅰ. 宮城資料ネット講演会

・日時・場所:2018年6月3日 東北大学川内南キャンパス 文学部第2講義棟(仙台市)
・講演:平川新「宮城資料ネットの15年を振り返って」
・参加:50 名

ⅱ. 人間文化研究機構広領域型基幹研究プロジェクト国文学研究資料館ユニットシンポジウム
福島県浜通りの歴史と文化の継承―『大字誌ふるさと請戸』という方法―(後援)

・日時:2018年10月13日(土)13:30~17:00
・場所:せんだいメディアテーク
・主催:人間文化研究機構広域型基幹研究プロジェクト国文学研究資料館ユニット「人命環境アーカイブズの過去・現在・未来に関する双方向的研究」
・共催:国文学研究資料館基幹研究「アーカイブズと地域持続に関する研究」
・後援:浪江町、ふくしま歴史資料保存ネットワーク、NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク、人間文化研究機構「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業」
・参加:120 名

ⅲ 石巻市での歴史講演会「よみがえる北上川河口の歴史」(主催)

ジョン・ダミコ(イェール大学大学院)
「幕末期北上川河口の土地再開発に見る近江商人と地域の関係」
・日時:2018年8月18日 午後6時~8時
・場所:河北総合センタービッグバン
・参加:40名

ⅳ 第5回全国史料ネット研究交流集会(後援)

ジョン・ダミコ(イェール大学大学院)
・日時:2018年11月17日(土)、18日(日)
・場所:新潟大学中央図書館ライブラリーホール
・主催:第5回全国史料ネット研究交流集会実行委員会、人間文化研究機構

ⅴ 公開フォーラム「被災地と史料をつなぐ―歴史資料の被災状況と保存技術の共有―」(共催)

・宮城資料ネット関係者の講演
蝦名裕一「東日本大震災以降の気仙郡における史料保全活動」
斎藤善之 コメント
・日時:2019年3月16日(土) 13:00~17:00
・場所:東北大学災害科学国際研究所 1F 会議・セミナー室
・主催:東北大学災害科学国際研究所、歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業東北大学拠点、指定国立大学災害科学世界トップレベル研究拠点
・共催:東北大学東北アジア研究センター、NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク、人間文化研究機構、神戸大学大学院人文学研究科
・参加:40名

ⅵ 歴史文化資料保全北日本大学協議会(共催)

・宮城資料ネット関係者の講演
佐藤大介「(趣旨説明)」
斎藤善之「宮城資料ネットのレスキュー活動と現状の課題」
上山眞知子、モリス・ジョン、加藤諭、佐藤大介「資料レスキューによる心理社会的支援」
・日時:2019年3月17日(日) 13:00~17:00
・場所:東北大学災害科学国際研究所2階演習室
・主催:歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業東北大学拠点、人間文化研究機構
・共催:東北大学災害科学国際研究所、NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク、科学研究費挑戦的萌芽研究「歴史資料保全活動の心理社会的影響に関する調査研究」研究グループ(研究代表者・佐藤大介)
・参加:40名

②展示・体験講座

ⅵ 大学ゼミ旅行などの受入対応
首都圏の大学などの訪問を受け、被災資料保全の体験実習を行ってもらうことで、被災資料の現場や技術を知ってもらう機会を設けた。今年度の受け入れは以下の通りである。

 2018年9月13-14日 中央大学文学部・白根靖大ゼミ、山崎圭ゼミ(10名)
2018年9月15日 立教大学文学部・木村直也ゼミ(10名)
2018年9月19日 金沢大学人間社会学域・上田長生ゼミ(22名)
2018年11月1-2日 明治大学文学部・野尻泰弘ゼミ(8名)
2018年1月24-25日 一橋大学大学院社会学研究科歴史社会研究分野(15名)
2018年2月18日 一橋大学社会学部・石居人也ゼミ(10名)
2018年3月25日 神戸大学学生震災救援隊(8名)

ふすま下張り文書の剥離を中心とする体験学習とともに、東日本大震災発生直後の動向や被災地の現状に関する講座を行った(11月、2月18日を除く)。

③その他の普及活動

ⅶ 参議院東日本大震災復興特別委員会での参考人招致
2018年7月11日に事務局の佐藤大介が参考人として招致され、東日本大震災における歴史資料保全活動について15分間の陳述を行った後、与野党の委員と質疑応答を行った。なお、当日の議事録および映像については参議院より公表されている。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/196/0152/19607110152006.pdf
ⅷ 日本学術振興会シンポジウム
2018年7月29日に開催された日本学術会議第一部会公開シンポジウム「東日本大震災後の10年を見据えて」にて、事務局の佐藤大介が講演を行った。
「『ふるさとの歴史』を救う意味―心理社会的支援としての歴史資料保全の可能性-」
ⅸ ユネスコ「世界の記憶」主催フォーラムでの講演
フランス・パリのユネスコ本部にて、現地時間2018年12月11日に開催された「世界の記憶」部門主催のフォーラム “Disaster Risk Reduction and Management for Sustainable Preservation of Documentary Heritage” にて、事務局の佐藤大介が招待講演を行った。なお、「世界の記憶」公式サイトの短信にて記名で紹介されている。
https://en.unesco.org/news/unesco-hosts-global-policy-forum-disaster-risk-reduction-preserving-documentary-heritage

④齋藤報恩会寄贈資料集出版事業

2015年に解散した財団法人斎藤報恩会が収集した史料について、同会清算委員会からの助成金を活用した史料集の出版に向け仙台市博物館に協力を仰ぎ、承諾をうけた。

⑤会報「宮城資料ネット・ニュース」について

第304号(2018年4月6日)より第332号(2019年3月25日)まで29回の発信を行った。ボランティア募集、行事案内が中心であり、前年に引き続き活動状況についての発信が十分に出来なかった。

⑥公式サイトのリニューアルについて

デザインの更新が完了した。メールニュースやお知らせなどについても随時更新し活動の発信に努めた。

⑦SNSでの発信

前年度に取得したツイッターおよびFacebookアカウントからの発信を行っている。主として毎週のボランティア活動について、速報を発信することが出来た。また、西日本豪雨に際しての呼びかけについては、岡山資料ネットのツイッターと連動しながら情報発信に寄与することができた。
*参考 ツイッター 130ツイート 213フォロワー
Facebook 108フォロワー

(5) その他

①理事長交代に伴う関係先訪問

理事長の交代に伴う関係先訪問として、9月6日に栗原市および大崎市の文化財関係部局を訪問し、東日本大震災での被災歴史資料の救済・保全の状況、地域における歴史資料保存の現状と課題について共有した。

②文化遺産防災ネットワーク推進会議・ガイドライン

国立文化財機構による文化遺産防災ネットワーク推進会議の構成団体として、5月23日(佐藤)、11月15日(川内)に東京国立博物館で開催された定例会議に出席した。東日本大震災の活動状況の報告や、西日本豪雨および北海道胆振東部地震への対応について報告した。
また、同会議が策定中の「文化遺産防災ガイドライン策定会議」に、事務局の佐藤が有識者として参画している。10月5日および1月19日に京都国立博物館で開催された会合に参加した。

③会計報告書の電子公告について

NPO法の改正に伴い義務づけられた会計報告書の公告について、公式サイトに会計報告書を公開した。

4 運営に関する事項

(1)理事会・総会

①理事会

・2018年6月17日 理事会 於:東北大学川内キャンパス
出席した役員 21名
・2019年3月12日 メール理事会 通常総会の日程及び会場について
メール理事会については、メーリングリストでの告知を行っているが、今回の総会開催に際して、送付先やメールアドレスが長期にわたって更新されていないことが明らかになった。

②通常総会

・2018年6月17日 東北大学川内キャンパス 出席した社員数19名(ほか、委任状提出者62名)

(2)運営委員会

本年度は以下のように開催した。
○第3回 2018年4月20日 東北大学災害科学国際研究所歴史資料保存研究分野研究室

理事会・総会の準備状況/次期役員の構成/史料集の刊行/公式サイトの更新

○第4回 2018年5月23日 東北大学災害科学国際研究所歴史資料保存研究分野研究室

理事会・総会および講演会の準備状況/資料管理システムについて/会員証について/HP リニューアル・SNS の運用/事務局の活動報告/その他

○第5回 2018年7月18日 東北大学災害科学国際研究所歴史資料保存研究分野研究室

西日本豪雨への対応について

○第6回 2018年8月2日 東北大学災害科学国際研究所歴史資料保存研究分野研究室

参議院参考人招致の報告/西日本豪雨への対応 など

○第7回 2018年10月19日 東北大学災害科学国際研究所歴史資料保存研究分野研究室

事務局新任/活動報告/北海道胆振東部地震への対応について

○第8回 2019年1月25日 東北大学災害科学国際研究所歴史資料保存研究分野研究室

事務局員の新任について/活動報告/クラウド運用/行事の共催/その他/第13回総会

(3)NPO向けクラウドサービス支援への契約

古文書画像データの保管や、事務運営書類の共有などを図るため、マイクロソフト社が提供するNPO向け支援プログラムの審査を経て、同社のOffice365サービスを5ユーザー分契約した。年額の費用は約3万円で、関係ソフトの利用、データ容量無制限での預託を行える環境を整備することが出来た。当該の経費については、現時点での会費収入で確保できる状態にある。

(4)史料保管管理システムの構築

救済した古文書に対する作業の進捗状況が、事務局内部でも共有できていない状況を改善するため、賛助会員であるプレシードの支援により、史料保管管理システムの構築を図り、試行版が完成した。

(5)会費・活動資金について

①会費について

昨年度20人近く減少した個人会員については、今年度は5人増加となった。
会費の納入については、長期滞納者からの納入があり、未納者と相殺された形になっている。

②カンパについて

東日本大震災にともなう歴史資料保全活動への寄附金として8名から125,000円の寄附をいただいた。

(6)会員の増減について

2019 年3 月31 日時点での会員数 170名
正会員 123 名(前年比 +5 )
賛助会員 34 名(前年比 ±0 )
学生会員 2名(前年比 +1)
団体賛助会員 9 団体(前年比 ±0 )