253号 仙台市博物館企画展「せんだい再発見!」開催中

東日本大震災

仙台市博物館 菅野正道


 仙台市博物館では、企画展「せんだい再発見!―こんなことわかりました。平成の『仙台市史』」を、12月5日(土)から開催しています。
 市制100周年記念事業として平成2年から始まった仙台市史編さん事業は、仙台市博物館が事業主体となり、平成26年度までに全32巻を刊行し完結しました。本展は、20年以上にわたる市史編さんの過程で調査・収集してきた資料の中から代表的・特徴的なものを選んで展示し、地下鉄東西線の開業で新たな時代を迎える仙台という地域を、改めて見直す機会とするものです。前期・後期で合わせて約160件の展示資料を通して、今まであまり語られてこなかった歴史と文化が『仙台市史』の成果をもとに浮かび上がります。ぜひ、ご観覧ください。

 主な展示資料としては、重要文化財に指定されている留守家文書、原本が初公開となる留守政景書状、仙台市域の文政村絵図や検地帳、仙台城の懸造を題材とした絵画資料などがありますが、ほかにも注目していただきたいポイントを幾つかご紹介します。

1.東日本大震災関連の展示   


 東日本大震災後、仙台市博物館は宮城資料ネットや文化庁、国立公文書館など関連機関の協力をいただきながら、仙台市内の被災歴史資料の調査、保全活動を行ってきました。その過程では、市史編さん事業で蓄積された情報が有効に活用され、また委員として市史に関係した研究者や市史編さん室のスタッフが精力的な活動を行いました。
 このような経緯から、今回の企画展では、東日本大震災の津波で被災し、保全された資料の展示を行いました。津波で被災した中野小学校・荒浜小学校・東六郷小学校の学校資料、海水で劣化した荒浜の古文書や三本塚の涅槃図、荒井にある大日堂の祭礼で用いられていた江戸時代ののぼり、種次の旧家で流失をまのがれた近代の気象・災害の記録などが展示されています。
 また他のコーナーでも、2千年前の津波の痕跡を示す沓形遺跡の断面剥ぎ取り標本や、貞観地震についての記述がある『日本三代実録』、被災地に関する江戸時代の絵図も展示されています。
 東日本大震災からまもなく5年を迎えようとしており、震災復興に関しては「区切り」や震災の記憶の風化が言われ始めています。しかし、被災地の歴史や東日本大震災も含めた災害の記録を調べ、伝えて発信していくことは、終わりのあることではありません。この展示が、また新たな出発点になることを願っているところです。

2.公文書の展示

 仙台市史の編さんでは、当然のことながら多数の公文書を資料として活用してきました。また、市史編さん事業の過程では、仙台市に合併された宮城町や泉市(町、村)の公文書の一部や、仙台市の公文書で保存年限が満了となった公文書の一部を収集・保存してきました。
 このような経緯から、今回の企画展では公文書を展示するコーナーを設けました。これは、仙台市博物館の企画展・特別展としても初めてのこととなります。戦前に行われた周辺自治体の合併に関する文書、仙台市の市章制定に関する文書、仙台空襲に関する文書などを展示するほか、今回の企画展が地下鉄東西線の開業記念も兼ねていることから、仙台市域の鉄道に関する公文書をセレクトしています。

3.伊達政宗文書

 『仙台市史』の目玉企画の一つが伊達政宗発給文書の集成でした。全国各地を調査し、合計で4千点以上の文書を『仙台市史』に収録することができました。今回の企画展では、伊達政宗の発給文書をコレクション展示室に大集合させ、前期と後期に分けて30数点を展示しています。前期は政宗のセキレイ花押の文書と印判状、後期は政宗が家臣や家族に宛てた手紙を中心に、内容や宛て先も吟味し、それぞれ政宗の生涯を通観できるような構成としています。
 伊達政宗文書は仙台市博物館の展示資料としては欠かせないものですが、これだけの数を、しかも一つの展示室を丸ごと使ってご覧いただける機会はほとんどありません。この機会に政宗文書を通じて、戦国時代から江戸時代初期の仙台に思いをはせてはいかがでしょうか。

 このほか、今回の企画展では講座「こんなことわかりました。仙台市史」や展示室で資料解説を行う「コーナートーク」、博物館1階ギャラリーで同時開催の関連展示「市史編さん事業展 あれコレ?せんだい」、仙台門松の復元展示など、仙台の歴史により親しめるような企画を満載しています。詳しくは仙台市博物館ホームページを参照ください。ご来館をお待ちしております。
http://www.city.sendai.jp/kyouiku/museum/tenrankai/index.html

展覧会概要
1 会期 12月5日(土)~平成28年2月28日(日)
※期間中、一部展示替えがあります
前期:12月5日(土)~1月17日(日)
後期:1月19日(火)~2月28日(日)
2 開館時間 9:00~16:45(入館は16:15まで)
3 休館日 毎週月曜日(1月11日は開館)、12月24日(木)
12月28日(月)~1月4日(月)
1月12日(火)、2月12日(金)
4 観覧料 常設展料金
一般・大学生 400円、 高校生 200円、 小・中学生 100円
※各種割引についてはお問い合わせください
問い合わせ先:仙台市博物館情報資料センター(022-225-3074)