333号 文化財レスキュー活動に参加して

救う―救済活動東日本大震災

2019年3月25日(月)の宮城資料ネット・ボランティア作業に、神戸大学学生震災救援隊の大学生8名が参加してくれました。
参加記をお願いしたところ、前田彩希さんに快く引き受けていただきました。

「文化財レスキュー活動に参加して」

前田彩希(神戸大学学生震災救援隊)

今回東北大学で文化財レスキューの活動に参加させていただいたことで、我々にとって非常に貴重な体験ができたと感じています。

この文化財レスキューに活動に参加することに決まるまで私はこの活動について全く知りませんでした。そのため、どんな資料を保存していく必要があるのか、また、資料の保存によって何がもたらされるのかについて無知な状態でした。この活動への参加を通して、行政の保護の対象にならない民間所有のものの中にその土地の歴史を知るための手がかりがたくさん埋もれていること、震災や津波、また災害には無関係なところでそれらの民間所有の資料が失われる状況にあることを理解することができました。

我々が参加させていただいた活動は、襖剥がしの作業と資料のクリーニング作業でした。襖剥がしの作業では、襖の内部に使用されている古紙を、順番を記録しながら、1層1層丁寧に剥がしていきました。薄い和紙を破かないように慎重に剥がす作業は、集中力や器用さを要し、想像以上に大変な作業だと感じました。また、資料のクリーニング作業では江戸時代の台帳や昭和初期の写真等の汚れを払う作業を行いました。これらの作業は史学等に関する専門的知識の無い我々にも行えるもので、実際に文化財レスキュー活動に参加することで史学や史料へのハードルが下がったように感じました。

この活動に参加する中で何より印象的だったのは、一緒に活動した市民ボランティアの方々の存在です。市民ボランティアには女性や高齢者が多く、我々が普段行うボランティア活動とは違った光景でした。皆さんとても明るく楽しい方々ばかりで、一緒に作業を行いながら、資料の内容やたわいのないことをお話しして非常に素敵な時間だったと感じています。また、活動後に自主的に崩し字を学ばれている方もいるとのことで、文化財レスキューの活動が史学や郷土史への門戸を開いているということに感動しました。大学と一般市民とが一緒になって行える活動の醍醐味だと感じました。また、ボランティアの方同士で交流することで新たな人間関係が生まれたり、震災の被害を乗り越えていく力になったりするということも知ることができました。

文化財レスキュー活動に参加できたことで、我々が知らなかったボランティアのあり方、新たなニーズ、人との繋がりについて知ることができたと感じています。今後、我々が生活している神戸や各人の地元でもこういった活動に目を向けていきたいと思いました。

貴重な経験をさせていただきありがとうございました。