342号 「1対200」に思う

事務局の佐藤大介です。仙台・宮城は冷気と霧雨、そして冷たい北東からの季節風「やませ」が続く毎日です。長く仙台に暮らす身としては、久しぶりの「いつもの梅雨」ではあるのですが、あまり長引くと稲作その他への影響が懸念されるところです。

東京女子大学の髙橋修さんから、昨年8月24日に同大学で実施された高・大連携授業で実施された「くずし字読解入門―古文書を授業にどう活用するか?―」が、先日公開されたとの動画がご案内をいただきました。

髙橋先生のご専門は江戸時代史、博物館学で、山梨県立博物館に在職の折には、小学生向け古文書解読のテキストを開発され、受賞もされています。

また東日本大震災で被災した史料レスキューへのご支援、さらに山梨県内での関係者への紹介にもご尽力いただきました。本メールニュースをご覧の方には、古文書の活用に取り組まれている方々も多いと存じますので、一つの例としてご紹介させていただきます。ご参考になれば幸いです。

地歴「くずし字読解入門―古文書を授業にどう活用するか?―」高橋修
http://www.twcu.ac.jp/univ/facilities/empowerment/kyokabetsumovie/

私見を述べさせていただければ、動画の「Part3」、19分15秒以降から髙橋先生が指摘されておりますが、以下が印象に残りました。

現在の日本において、古文書解読能力を持った人は、推計5000人。

一方、英検1級の合格者は、100万人。

神戸大学の奥村弘先生が、日本列島に残された古文書を20億点と推測しておられます。これが世界中のどの地域よりも圧倒的な質量だということは、国内外の関係者の一致した見解のようです。

一方、当の日本では、過去に同じ地域に暮らした人々が残した膨大な記録を読める人よりも、英語を使いこなせる人員のほうが圧倒的多数。これが、現状です。

退職者の増加を背景に、古文書解読講座の参加者は各地で増加傾向。また報道によれば機械学習の開発も進んでいる由。それでも、20億点の「活用」には、やはり「人」あってこそと考えています。

「1対200問題」を、どう考え、また対処していくのか。社会全体での議論が必要なのではないかと感じられました。

(佐藤大介・記)