361号 地域歴史文化大学フォーラムin名古屋へ参加
2020.01.20
昨年12月に名古屋大学で東海資料ネットの設立に向けて「地域歴史文化大学フォーラムin名古屋 地域資料保全のあり方を考える」が開催されました。宮城資料ネットからは、齋藤善之理事長が報告「宮城資料ネットが経験したこと・その成果と課題―宮城と愛知をつなぐ・経験知の共有にむけて―」を行いました。
東北歴史博物館の森谷朱さんに参加記を書いていただきました。
シンポジウム「歴史文化の保存・継承と防災対策―東海資料ネットの設立に向けて―」に参加して
(森谷 朱)
2019年12月22日(日)、名古屋大学で開催された「地域歴史文化大学フォーラムin名古屋 地域資料保全のあり方を考える」のシンポジウムに参加させていただきました。私は、博物館の保存科学分野の学芸員として、自然災害により被災した資料のクリーニングや整理作業を行っています。また、宮城歴史資料保全ネットワーク(以下、宮城資料ネット)の被災歴史資料のクリーニング作業にも何度か参加させていただき、宮城資料ネットの皆様には、日頃から大変お世話になっています。
私は、大学院生の時に災害時における文化財資料の救出活動について調査研究を行ったことがきっかけで各地の「資料ネット」の活動について知りました。当時から、市町村の文化財担当者間や博物館等の施設間ネットワークの働きについて関心を持っていましたが、博物館に就職してからは、多発する自然災害により年々数を増す被災資料を目の当たりにし、より一層ネットワーク構築の必要性や重要性について考えるようになりました。国内の資料保全活動や、災害に備えた行政や大学、博物館等の連携について勉強していたところ、宮城資料ネットの安田容子先生にお声がけいただき、今回のシンポジウムへの参加という貴重な機会をいただきました。
フォーラムは、「東海資料ネット(仮称)」設立の出発点に位置付けられており、シンポジウムでは、愛知県史編纂事業について、東日本大震災の時の彫刻文化財の救出事例、宮城資料ネットのこれまでの成果と課題、岡山史料ネットのこれまでの経験について、4つの報告と、愛知県博物館協会について、大学における「資料ネット」の活動について、阪神淡路大震災以降の「資料ネット」の活動について、3つのコメントが提示され、その後報告者とコメンテーターによるパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションでは、「行政や博物館等との連携のあり方」と「大学教育と資料保全」という2つのテーマで議論がなされました。報告、コメント、また、パネルディスカッションの際に会場の参加者の方々から出されたご意見も含め、皆、資料保全への熱い想いを込めながらユーモアに溢れたお話で、とても楽しく、大変勉強になりました。意見交換会では、愛知県の博物館・美術館の学芸員の方々や歴史学や文学、美術史学等の他分野の研究者の方々と交流することができ、有意義な時間を過ごさせていただきました。
シンポジウムに参加させていただき、歴史資料の保存・継承と防災対策について、愛知や岡山のほか、兵庫や山形、宮城の現状、また様々な事例を知り、資料保全やネットワーク構築に対する考えを深めることができました。今回学ばせていただいたことと、お会いした方々とのご縁を大切にし、一つでも多くの資料を後世に残すことができるよう、これからの研究活動や博物館の業務に生かしていきたいと思います。
最後に、今回貴重な機会をくださった宮城資料ネットの皆様にお礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。