368号 第6回全国史料ネット研究交流集会 参加記

広める―普及活動

史料ネット全国集会 参加記

井上瑠菜

 2月8・9日、神戸市の御影公会堂で第6回全国史料ネット研究交流集会が開催されました。2020年は阪神・淡路大震災から25年の節目の年でもあります。本集会の開催によって当時の取り組みを振り返るとともに、全国に広がる各地の史料ネットの取り組みや課題、展望を考える機会となったように思います。集会では、4つのセッションごとにテーマが設定され、各地の史料ネット関係者からの活動報告をふまえた活発な議論が行なわれました。また、セッションとセッションの合間には意見交流会としてポスター発表の時間もありました。ここでは各地の史料ネットがこれまでの活動や昨年10月に日本列島各地に甚大な被害を及ぼした台風19号の被災地における対応などがポスターにまとめられ、ポスター発表者と参加者はより近い距離で意見交流を行っている様子が印象的でした。また今回会場となった御影公会堂についてのご紹介もあり、神戸がこれまで市民とあゆんできた歴史を肌身で感じながら2日間を過ごさせていただきました。本文では、簡単に全国史料ネット集会の参加記として、セッションごとの内容をまとめるとともに、おおまかな感想を述べたさせていただきます。

4つのセッションについて。第1セッション「大規模災害時の全国連携・支援―台風19号をめぐって―」では4団体(信州資料ネット・宮城資料ネット・ふくしま歴史資料保存ネットワーク・茨城史料ネット)からの報告がありました。台風19号をめぐっての初期対応と被害状況、レスキュー資料などについて情報を共有しました。なかでも信州資料ネットは昨年新たに設立された新しい資料ネットで、その精力的な活動の様子が大変印象に残りました。また、他セッションでもたびたび取り上げられた「次世代への継承をどのように行うのか」ということについて、学生を中心に組織されている茨城史料ネットから課題として提示されました。

第1セッションでの本会事務局・蝦名による報告

第2セッション「史料ネットの25年と資料保全・地域史のあゆみ」は歴史資料ネットワークの阪神・淡路大震災発生当時の世代から、6代にわたる事務局長による座談会です。25年間の活動を振り返るとともに、世代や活動の段階ごとに見えてくる課題を、歴代事務局長らの体験談から知ることができました。震災発生の混乱とはまた一転して、安定期における日常の活動をどのように行っていくのかなど、世代をこえた座談会だからこそ挙げられた課題があったように思います。
第3セッション「史料ネットと震災資料の25年」では震災資料の保存・活用への取り組みと、そこで浮き彫りとなった東日本大震災被災地における災害関連公文書の保存問題や、中越地震の震災資料のほか、阪神・淡路大震災の震災資料の利用事例について紹介いただきました。登壇されたのがメディア・行政・大学機関など互いに異なる立場の方々だったことは、このセッションにおいて極めて重要であったと感じます。それぞれの経験のなかから徐々に見えてきた、震災資料の収集や保存、利用、公開をめぐる課題について多くのことを勉強させていただきました。
第4セッション「資料保全の担い手の広がりと未来」では、資料保全の取り組み、特にボランティアを通じて生まれた人と人の多様な関わりについて知る機会となりました。学生や市民の立場からボランティアとして資料保全の現場に関わる人やそうしたボランティア活動をつくっていく方々の関わり方はさまざまです。「ボランティアとは何か」、「資料保全とはなにか」。ボランティアに関わられた方々の声を聞くことで、担い手の広がりとその未来について考える貴重なきっかけとなりました。

井上による本会のポスター報告

以上述べてきたことだけでなく、本集会ではありとあらゆる意見、そして課題が見出されたように思います。運営に関わられた皆様、登壇された皆様、本当にお疲れさまでした。