373号 「断捨離」のその前にー「古いもの」の保存のお願い

 

新型コロナウィルスの感染拡大にともなう全国への緊急事態宣言の中、ご自宅での待機が続く方、また色々な事情で出勤されているかたもいらっしゃるでしょう。引き続きご用心ください。
もともとインターネット中毒ぎみの私は、この状況でますますそこに没入してしまい、真偽定かならぬ情報に右往左往してしまっています。我ながらまずいなと思っているのですが、そんな中、時事通信社が次のような記事を発信したのを目にしました。

在宅生活、進む断捨離 粗大ごみ増加、フリマ出品も―専門家「人生見直しに」(2020年04月24日06時54分)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020042300621&g=soc

これは、古い書類や日記、写真、アルバムなど、主に紙に残された過去の記憶、思い出を、その家のみならず地域の歴史を語る「史料」として、現在に生かし、また未来に継承していこうとする活動を行う立場として、非常に「まずい」状況だなと感じました。

もしこの大型連休中に「断捨離」をされる方、お近くでそのような情報を得られた方で、古い書類、日記、写真、アルバムなど「古くてよくわからないもの」を見つけられたら、安易に廃棄せず、一旦保管していただいて、本会まで情報をお寄せいただければ幸いです。
また、本会は全国に20を越える、同じ活動を行う団体と協力関係にあります。宮城県以外の地域についても情報共有が出来ます。

各家庭で保管されている「古いもの」は、各家庭のものであって、いかに歴史的・文化的な価値があろうとも、それを取り上げることは出来ません。それを捨てるか、残すかの判断は、所有者の判断が最優先されます。

一方、これまで日本列島で起こった自然災害では、自然現象による消滅・破壊といった理由に加え、そのことを「古くてよくわからないものを処分する機会」ととらえた人の意志によって、多くの史料が失われました。状況が落ち着かない中、急に「古いもの」を突きつけられても、どうしていいかわからず、生活の立て直しの中で処分される決断をされることは、致し方のないことであるとも考えます。

ただし、早計な判断で処分したことを後悔される所蔵者の方、救出された記録に記された過去の小さな出来事、思い出を、心の支えにされた方々にも出会ってきました。

現在、人と人との交流が制限され、つながりが断ち切られています。そこに加えて、この期に古い記録が大量に廃棄されてしまうようなことになれば、私たちは過去の人々とのつながりすら失うことになります。

大型連休、そしてその後も続いてしまうのかもしれない状況での、思いがけない「古いもの」との出会いが、「処分」ではなく、「自分、家族、ふるさとを形作ってきた過去に向き合う機会」という意味での「新しい価値の発見」につながってほしいと、すぐに支援に駆けつけられない状況の中で、強く願っています。

(佐藤大介・記)