384号 「疫病退散プロジェクト」の紹介と情報提供のお願い
2020.10.06
東北大学災害科学国際研究所災害文化研究分野の蝦名裕一さん(本会理事)からのお知らせです。同分野では新たに「疫病退散プロジェクト」を開始し、疫病に関する石碑や文書、慣習などについての情報を募集しているとのことです。
お問い合わせは東北大学災害科学国際研究所災害文化研究分野までお願いします。
宮城資料ネット理事の蝦名です。今回は、この程新たに開始した「疫病退散プロジェクト」について紹介します。
ご存じの通り、新型コロナウィルスの流行をうけて、私達の生活は様々な制限をうけるとともに、仕事や教育などのオンラインへ化が加速度的に進むなど、大きく変化しています。一方で、疫病退散の御利益があるとされる神社や妖怪アマビエへの注目にみるように、昔の信仰や生活の中に存在した“疫病退散”を願う文化に改めて関心が寄せられています。今回のコロナウィルスは、決定的な治療法や予防法が確立していない状況の中で、現代社会に大きな動揺をもたらしましたが、考えてみれば、近代医学が成立する以前の人々にとって、疫病は生命や社会を脅かすより身近な存在だったのではないでしょうか。
疫病がより身近な脅威だった時代、先人はいかに疫病を克服、または共生していったのか。この問いを解明することが、今日コロナウィルスの脅威の中に生きる我々の道標にもなるはずです。その謎を、研究者や専門家だけではなく、一般の方々からも情報をいただき、一緒に考えていくのが、この「疫病退散プロジェクト」です。
このプロジェクトは、地域に残る様々な疫病文化に関連した情報を皆様から募集するとともに、近年新しく開発された、石碑の文字情報を手軽に、かつ正確に収集できる「ひかり拓本」技術などの技術を公開・提供するという市民参加型の研究手法で実施します。この情報のやりとりは、このホームページを通してオンライン型で実施し、コロナ時代に適合した研究の形を目指します。また、寄せられた情報については、歴史や民俗の研究者に加え、医学の研究者も参加した、文・医連携型の研究で分析・考察を進めます。
プロジェクトを実施するにあたり、私の所属する災害文化研究分野のホームページを開設いたしました。
*災害文化研究分野ホームページ → https://www.saigaibunka.jp
皆さまの周囲に、疫病に関する石碑や文書、疫病退散の御利益がある神社やお札、祖父・祖母などが語ってくれた疫病に関する伝説やおまじないなどの情報がありましたら、ホームページ内の「疫病退散プロジェクト」の投稿フォームより是非お送り下さい。
また、ホームページの他、研究分野のTwitter( https://twitter.com/saigaibunka )も開設いたしました。こちらで最新の研究の成果や「ひかり拓本」の技術についても紹介していく予定です。年度内には、「ひかり拓本」の講習会やシンポジウムの開催も構想しております。これらの情報については、ホームページのほか、Twitterでも発信していく予定ですので、是非ご覧下さい。
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■「コロナとどう向き合う 東北大が感染症の歴史研究」(9/30、東日本放送)
http://www.khb-tv.co.jp/news/localNews/202009301903048.html
■「疾病の歴史文化を広域調査、新型コロナ対応で 東北大」(10/1、朝日新聞宮城版)
https://www.asahi.com/articles/ASNB13FT4N9ZUNHB007.html
■「疫病流行、実態に迫る 石碑・習俗から文化や歴史を 地域住民に情報募る 東北大が調査」(10/4、毎日新聞宮城版、有料記事)
https://mainichi.jp/articles/20201004/ddl/k04/040/016000c
■「疫病退散、歴史に学んで 東北大災害研、石碑や習俗の情報募る」(10/5、河北新報)
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202010/20201005_13018.html
■「「牛頭天王」など疾病にまつわる信仰・習俗からコロナ対策探る…東北大がプロジェクト」(10/5、読売新聞宮城版)