386号 「歴史資料保存と災害支援 歴史資料保存活動がなぜ、災害に強い地域づくりに 貢献できるか」の公開について

広める―普及活動救う―救済活動

本会のJ.F.モリス理事が、「歴史資料保存と災害支援 歴史資料保存活動がな ぜ、災害に強い地域づくりに貢献できるか」を、公表いたしました。東北大学機 関リポジトリの以下のURLで公開しております。本号はモリス理事からの報告に なります。

http://hdl.handle.net/10097/00129482

ぜひご一読いただくとともに、関心のあるみなさまへの転送・周知をお願いでき れば幸いです。(事務局:佐藤大介)

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各位

各地の歴史資料ネットの活動に参加している者ならだれでもが経験的に知ってい る、資料レスキューの「力」について、その「力」とはどのようにして生み出さ れ発揮されるかについて、最新の支援学の理論を応用して解説する原稿を書きま した。

実は、歴史・文化的遺産を防災・減災・復興に活かすべきであるという認識が国 際的に広がっており、2015年の「仙台防災枠組み2015-2030」の原文にもこのこ とが明記されています。しかし、原文が和訳される過程でこの部分の意味が落と され、日本国内では「仙台枠組み」の意味が充分に伝わらない結果となっています。

こういう状況に鑑み、”Sendai Framework for Disaster Reduction 2015-2030″ と、「最大防災枠組み2015-2030」の該当する部分を比較して検証します。その 上で、資料レスキュー活動がなぜ、被災者および被災したコミュニティの「はげ み」になるかということを、「心理社会的支援」、「レジリエンス」と「ソー シャル・キャピタル」をキーワードに、説明する原稿を公表しました。

これらの言葉を理解できると、私たちが行っている資料レスキュー活動がもつ、 被災者・被災地支援の可能性を少し工夫しただけで、より高い次元に高める道が 開けてきます。

さらに、1995年の阪神淡路大震災以来、未登録文化財・資料をも対象にする日本 の歴史資料レスキューネットの実績は、世界的にみて圧倒的な実践データの蓄積 となります。

世界的にみても、この実践で得られた技術的な面に留まらず、被災者・被災社会 に対する効果を我ら自身ももっと自覚して、世界に向けて情報発信ができれば、 大きな貢献となります。

原稿は、東北大学学術リポジトリの次のURLからダウンロードすることができます。

http://hdl.handle.net/10097/00129482

(要旨)
各地で行われている歴史・文化資料のレスキュー活動は、被災地において、有 効な心理社会的支援となる。ただし、資料レスキューを実践する当事者をはじ め、このことについての認識が広がらない。その根底にあるのは、「仙台防災枠 組み2015-2030」の誤訳と、それから生じるこの文書の日本国内での誤解であ る。「仙台防災枠組み」では、本来、文化遺産を防災・減災のための主要なファ クターとして位置付けているのに、外務省の和文仮訳では、この文意が別の意味 に置き換えらえている。本稿では、「仙台防災枠組み」の本来の意味を確認した うえで、文化遺産と資料レスキューが被災者・被災コミュニティのソーシャル・ キャピタルとレジリエンスを高める作用の解明をする。さらに被災者の過去の記 憶を取り戻すことによって資料レスキューが時間軸に沿う人間関係の修復をもた らすことによって被災者等のレジリエンスをさらに高めるという、ソーシャル・ キャピタル論とは違った次元の人間関係性の重要性を指摘する。

宮城学院女子大学名誉教授
東北大学災害科学国際研究所特任教授
(人間・社会対応研究部門 災害文化研究分野)
J.F.モリス