389号 石巻市雄勝町・葉山神社所蔵史料の返却によせて ―3.11で被災した古文書資料レスキュー・現状報告

救う―救済活動東日本大震災

2011年3月11日の地震と津波で被災した、地域の古文書に対する救済・保全活動は、今もなお続いています。その中で、12月3日、石巻市雄勝町の葉山神社へ、処置を終えた古文書の返却を行いました。その様子が「河北新報」に紹介されました。公開期限のある記事ですので、お早めにご覧いただければ幸いです。

津波被災の古文書、修復が完了 仙台のNPOが9年半作業 石巻・雄勝の葉山神社
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202012/20201203_13011.html

記事中にもありますが、当該の史料レスキューにはは市民ボランティア、さらには支援を申し出ていただいた千葉県白井市の修覆ボランティアの方々など多くの支援がありました改めて御礼申し上げます。


関連して、9年9か月時点での活動状況について報告します。

3.11で被災した古文書・歴史資料のうち、宮城資料ネットが所蔵者から借用する、という形で救出した個人および各種団体所蔵の古文書・文書記録は、現時点で88件にのぼります。

このうち、海水中の塩分などを含む付着物や、砂・泥の汚れを除去するなどして、安定した状態まで回復させ、全点のデジタル撮影を完了して、もとの所蔵者に返却出来たのは、26件です。全体の約30パーセントほど、ということになります。

この26件のなかで、目録の整備など、史料の内容に関する何らかの情報を付すことが出来たのは13件です。つまり、今後の活用などにつなげるための基礎的な情報環境を整えるところまで進んだのは、救出件数の15パーセント程度ということになります。

海水を浴びた文書を安定した状態に持って行くには、多くの作業を経る必要があり、当然ながら時間がかかります。その中で、2013年にレスキューした内陸部の資料に取りかかり始める中で、昨年の台風19号で被災した史料への対応が入りました。今年のCOVID-19の感染拡大では、作業が5か月間中断しました。しかし、最初の安定化については、最大で9年7か月、地道な作業に取り組んでいる市民ボランティアの活動により、ある程度見通しが付いてきてきました。そのことは、明記したいと思います。

それでもなお、という状況が、上記の数字になります。

その中で、一つでも前に進めたことについて安堵しております。

3.11は、まだ終わっていません。引き続きのご支援をお願いできれば幸甚です。