402号 心理社会的支援への学際的取り組み 臨床心理学と資料保全

東日本大震災

東北大学災害科学国際研究所客員教授のJ.F.モリスさん(本会理事)から、報告書「心理社会的支援への学際的取り組み 臨床心理学と資料保全」についての寄
稿がありました

皆さま

このたび、私モリスと、上山眞知子東北大学災害科学国際研究所客員教授で「歴史資料保全と災害支援試論 モノの保全から人・コミュニティへの心理社会的支援へ」と題する小冊子をTour(東北大学レポジトリー)に掲載させていただいたので、ご案内を申し上げます。URLは、次の通りです。

http://hdl.handle.net/10097/00129482

単純に読めば、モリス論文では歴史資料保全を心理社会的支援として理解するために必要な理論と実践例を提示し、上山論文では、すでに歴史学者が3.11以降、行ってきた資料レスキューが、そのレスキューを受けた所有者にとってどういう意味を持ったか、あるいはどういう変化をもたらしたか、を代表的な事例を選んで論じているものです。

しかし、別の読み方をすれば、2つの論文を合わせてとらえると、学際的なアプローチをとることによって、それぞれの学問(および実践)の領域単独では達成できないような心理社会的効果を、異領域間で協働することによって達成できるという事例にもなります。

管見の限り、こうした実践と研究を組み合わせた、心理社会的支援の可能性について追究した研究は存じ上げません。これまで心理社会的支援剃ものについて、ややもすれば理念が先行して、具体的な支援法の一つ一つについて、果たして効果があったか、その効果がどのようなものだったかなどと、第三者(歴史学者に対する臨床心理士)による客観的な評価を試みた研究が足りないのが現状だと認識しております。

こうした視点から見ると、今回Tourで試験的に公表しました論稿は、心理社会的支援研究として新しい領域と方法を開拓しようとする災害支援試論でもあります。

最後に、論文末尾に付録として、モリスが試みた「仙台防災枠組2015-2030」のより正確な訳文も掲載しました。この文章の理解が、歴史資料保全活動と深いかかわりを持つから、より多くの方にこの文章の意義と心理社会的支援の在り方について考えて議論を深めていくきっかけとなれば幸いに存じます。

掲載されている論文は、次の通りです。

「歴史資料保前保全活動がなぜ、災害に強い地域づくりに貢献できるか」
モリス J.F.

「歴史資料レスキュー活動が持つ心理社会的支援の可能性 PAC 分析を用いた事
例の検討による考察」
上山眞知子、佐藤正恵、一條麗香、モリス J.F