426号 東日本大震災から11年目を迎えて

守る―保全活動広める―普及活動救う―救済活動東日本大震災

理事長 斎藤善之

 あの日から11年目の3月11日を迎えました。私にとって、衝撃的な揺れから始まったその後の日々の記憶は今なお鮮烈であり、まるで昨日のことのようにも思えるいっぽうで、その後の様々な体験を積み重ねてきたこともあるのでしょうか、ずいぶん昔のことのようにも感じられます。

そのような思いは、この地の皆さんが共有される思いでもあるようで、震災の記憶の風化を憂う声は時を経るにつれて強まりをみせ、またそれぞれの震災体験を後世に伝えていこうとする様々な取り組みもさらに活性化しているように思われます。

それは個人の体験にとどまりません。様々な団体や組織にとっても震災の経験の記憶と伝承のありかたが問われるようになっています。とりわけ昨年は震災10年目ということもあり、数多くの震災遺構や慰霊と伝承の施設の整備や公開が進められたのは、まさにそうした現れでもありましょう。

さて宮城資料ネットにとって、震災とその後の取り組みは想像を絶するものがありました。そのため昨年の震災10年の節目を期に、活動の軌跡を回顧してまとめておきたいという思いが強まり、昨年2月の全国資料ネット集会の宮城大会の誘致へと繋がりました。そこに集った全国各地の資料ネットとともに、宮城資料ネットの震災から10年の取り組みを総括する報告がなされました。そこでは宮城資料ネットの活動の成果とともに、なお多くの課題が残されていることも確認されました。

震災10年を迎えた昨年3月から1年が経ちます。2019年末から流行が始まった新型コロナウィルス感染症は、短期間で収束することなく2021年にも感染拡大を繰り返し、2022年初頭には最大の感染者数を記録するなど先の見えない状況になっています。

宮城資料ネットの活動もそうした状況のもと、活動の重要な柱であるボランティアさんの史料保全修覆の作業が断続的に中止を余儀なくされるなど、活動が停滞してしまっております。そうしたなかでも定期的な運営委員会はオンラインで開催するなど活動を維持する試みを続けてきました。今後、状況をみつつボランティアさんによる史料の保全修覆作業の再開をはじめ、地域との連携を強める活動なども再開を目指していきたいと思っております。

皆さまにはこのような事情をご理解いただき、会の今後の活動にさらなるご支援を賜りますようお願い申し上げたいと思います。