431号 2022年3月16日福島県沖地震 緊急被災状況調査を実施しました

守る―保全活動救う―救済活動

宮城資料ネット事務局です。

3月16日に発生した福島県沖地震につきまして、現在、宮城資料ネット事務局では状況の把握に努めているところですが、
3月22日~24日の3日間、今回の地震で揺れが大きかった地域について、緊急被災状況調査を実施しましたので、概要を報告いたします。

■3月22日(火) 亘理、山元(宮城県)、新地、相馬、南相馬(福島県)
この日は宮城県亘理町から福島県南相馬市にかけて、陸前浜街道を南下する形で被害状況を調査しました。調査は宮城資料ネット事務局の斎藤善之、蝦名裕一、川内淳史が行いました。
今回調査した地域は、震源域から最も近い地域で、震度6強を記録した相馬市や南相馬市をはじめ、いずれも震度6以上を記録した自治体であり、大きな被害が発生していることが懸念されました。当日の天候は朝から雪で、調査地は吹雪となり、辺り一面真っ白な状態で、調査が難航いたしました。
被害状況としては、亘理町から南下するに従って大きくなっていく状況で、相馬市中心部や南相馬市鹿島区で特に大きな建物被害が確認されました。旧相馬中村藩の城下町である相馬市中心部では、外観から確認するに、新しい建物についてはほとんど被害が見られなかった一方、古い建物については軒並み壁の崩落や屋根瓦の落下、また被害の大きい家屋については建物自体の歪みが発生するなど、市中心部はモザイク状の被害が発生していることが確認されました。今回まわったいずれの自治体も被害の発生が確認され、今後さらに詳細な調査が必要であると感じられました。
また各地でお話を伺うと、昨年2月に発生した地震で被害を受けた箇所がもう一度被災したり、また昨年は無事であった箇所が今回被災してしまったりなど、昨年から引き続く災害の連続で、地域の皆さんの生活やメンタルに大きな影響を与えていることが懸念されました。

■3月23日(水) 角田、丸森、村田
23日・24日は好天に恵まれ、22日の真っ白だった景色は嘘のように無くなっていました。
この日は角田市、丸森町、村田町を、蝦名と川内とで回りました。震度6弱を記録した角田市では、昨日調査した相馬市・南相馬市のように古い建物に被害が発生していることが外観から確認できましたが、一方で調査で訪問した角田市の災害ごみ置場には、すでに大量の木製家具等が廃棄されており、外観からはわからない、家屋内部の大きな被害が発生していることが懸念されます。
また報道でも報じられているとおり、角田市郷土資料館(旧氏家丈吉邸)では、なまこ壁が約20mにわたって倒壊するほか、施設内に多数の被害が発生していました。昨年2月の地震の際にも被害のあった同館では、この年度末にかけて修理を進めていたところで今回の被災に遭い、4月に予定していた全面開館が延期となってしまったことに、同館の碇子館長は肩を落とされていました。
また丸森町では斎理屋敷の壁の剥落、村田町では伝建地区「蔵の町並み」で被害が発生しており、特に村田町についても角田市同様、昨年の地震から立ち直りつつあった矢先の被害に、何ともやりきれない気持ちにさせられました。

■3月24日(木) 川崎・蔵王・白石
この日も蝦名と川内で、川崎町、蔵王町、白石市を回りました。
川崎町については、川崎伊達家の墓石の倒壊、白石市は報道の通り天守閣の壁の剥落やひび割れ被害などが確認されましたが、全体的にはこれまで回った自治体ほど家屋被害は見られず、とりあえず一安心と言ったところでした。とはいえ、家屋内部の被害まではわからず、思わぬ被害が出ている可能性もあると、心配をしております。

■全体の状況および今後の対応について
駆け足で被災地域をまわりましたが、特に宮城県山元町から福島県新地町、相馬市、南相馬市、および内陸部の宮城県角田市あたりで家屋も含めた被害が出ていることが確認されました。これらの地域については、指定文化財等にも相当の被害が発生しており、年度末の折柄、行政の方々もその対応に大変苦心されているようです。
一方で、今のところ、民間所蔵資料についての被害状況は入っておりません。しかしながら相当数の家屋被害が発生している一方、地元行政でも人員の不足などにより十分調査の手が回っていない現状から、現時点で状況を十分把握し切れていない可能性もあります。

現在、宮城資料ネット事務局では、同じく被災地域に事務局を置く「ふくしま歴史資料保存ネットワーク」と情報共有を行い、史料の被災調査やレスキュー活動について連携・協力して対応にあたっていく体制をとっております。
今後、民間所蔵資料などの被災でお困りの際は、最寄りの教育委員会もしくは宮城・福島両資料ネットまでご相談いただけましたら幸いです。