441号 ICCROM「緊急時の文化遺産のファーストエイド」日本語版公開のお知らせ
2022.10.03
宮城資料ネット事務局です。
文化財保存修復研究国際センター(ICCROM)は、国際的に積み上げられて来た人道支援の原則に則りながら、歴史文化遺産の保全・修復支援を効果的にかつ誰にとっても安全に実施するための体系的な手引書として『First Aid to Cultural Heritage in Times of Crisis』(緊急時の文化遺産のファーストエイド)を2018年に発行しましたが、このたび、J・F・モリス氏(東北大学災害科学国際研究所特任教授、宮城資料ネット理事)と上山眞知子氏(東北大学災害科学国際研究所特任教授)の翻訳により、その日本語版が公開されました。
「緊急時の文化遺産のファーストエイド」では、災害時の文化遺産の救出と保全を、防災や復興全体のプロセスに位置づけることの重要性を強調し、そのための豊富な具体例が示されています。また、モノの救済のみならず、被災地や被災者の支援としての可能性を発揮できるような提起がなされています。
本ファーストエイドはハンドブックとツールキットの2部構成となっています。ハンドブックの序文では、文化遺産を守ることが自然災害や武力紛争などのトラウマを克服し、日常生活を取り戻すにあたって必要不可欠であり、文化遺産の救出や保全の活動は遅らせるべきではなく、緊急時やその後の人道支援から切り離されるべきではないことが強調され、その考え方と具体的な方法が示されています。またツールキットでは、救出時の現場での具体的な準備や作業マニュアルが示されています。
世界中で自然災害や武力紛争が頻発するなか、そうした危機から文化遺産を守っていく取り組みの重要性は、国際的にも広く認識されているところであり、私たちの資料ネットの活動も、そうした流れの中に位置付く取り組みだと考えています。
ぜひ多くの方にこの「緊急時の文化遺産のファーストエイド」をご覧いただき、文化遺産保全活動にご活用いただけましたら幸いです。
■「緊急時の文化遺産のファーストエイド」ハンドブック(日本語版、pdf)
■「緊急時の文化遺産のファーストエイド」ツールキット(日本語版、pdf)
【参考】
「緊急時の文化遺産のファーストエイド」日本語版発行に際してのモリス氏・上山氏の活動紹介およびインタビュー(英語)
J・F・モリス、上山眞知子「歴史資料保全と災害支援試論―モノの保全から人・コミュニティへの心理社会的支援へ」
Permalink http://hdl.handle.net/10097/00129482
ICCROM Offical Channel(Yotube)
・How can you save cultural heritage in an emergency?
https://www.youtube.com/watch?v=zM7_PXRBx6g