110号 東日本大震災・栗原市での歴史資料保全活動

救う―救済活動東日本大震災

 宮城資料ネット事務局の天野真志です。

 4月19日(月)、栗原市若柳地区を中心に、歴史資料の被災状況を調査しました。今回の震災は、大規模津波の影響で、沿岸部が壊滅的被害を受けております。それとともに、マグニチュード9.0という、国内史上最大規模の地震の影響で、内陸部においても大きな被害が確認されています。さらに、栗原市では、4月7日に発生した地震の影響で、何とか持ちこたえていた建物にも被害が出たようです。
今回は、地元の郷土史研究者の方から寄せられた情報をもとに、文化庁および栗原市教育委員会と協同で被害調査を実施しました。

■若柳地区の旧家

 まず、地元の研究者の方による案内で、4軒のお宅を訪問しました。
最初のお宅は、今回の震災以前に土蔵などを解体されていたそうですが、今回の地震で昭和初期に建てた母屋の柱が折れ、倒壊してしまいました。

 次に伺ったお宅は、昭和期に建築された旧映画館です。昭和初期の若柳を象徴する建物のひとつでしたが、2度の地震で被害をうけ、解体せざるを得ない状況であったようです。ご当主によると、江戸時代から明治初めにかけて医師を勤めた家で、江戸時代の医学書などを保管しているようです。
 その次にお訪ねしたお宅では、母屋の裏手にある土蔵が完全に倒壊し、中の所蔵物を残したまま横倒し状態になっておりました。これらのお宅へは、後日改めてお訪ねし、被害の詳細を確認していく予定です。

 連続した2度の大規模地震で、同地区の古建築などは大きな被害をうけました。その影響で、多くの歴史的建造物がすでに消滅しつつあります。今後、地震に耐えた建造物を後世に残し、歴史資料を保全するための活動を早急に進めていく必要性を痛感しました。

■若柳郷土資料館

倒壊した若柳郷土資料館

 
 同館は、古い民具や考古資料、近代の土地関係資料を数多く所蔵していますが、今回の地震で民具資料を収蔵していた部分が倒壊し、現在はブルーシートで覆われていました。
 また、展示スペースも、ガラスケースが軒並み破損し、倒れた資料を救出するのもかなり危険な状態でした。今後、倒壊部分に残された民俗資料を中心に、収蔵資料の保全作業を実施する必要があります。

■旧くりはら田園鉄道株式会社本社(くりでん)

くりでん車庫の現状

 
 かつて保全活動を実施したくりでん本社も、地震の被害を受けていました。
 旧本社については、外から見た限り、数枚のガラスが割れた程度で大きな被害は無いように見えましたが、車庫は側壁が倒れかけ、工場内部も物品が散乱している状態でした。

■築館出土文化財管理センター

 同センターに個人宅からふすまが十数枚搬入されたとのことでしたので、文化庁の方々とともに現状調査を実施しました。ふすまに描かれた書画に大きな破損はありませんでしたが、今後修復の必要性もあるとのことで、文化庁の方から修復に関するアドバイスを頂戴しました。

 センターの収蔵物に被害は確認されませんでしたが、建物の瓦が崩落し、収蔵庫の一部で雨漏りしている状態でした。

■瀬峰公民館

 公民館裏手が崩れ、物置が土砂につぶされていました。旧家から搬出したふすまがなかにあるため、レスキューの必要があります。倒壊を免れたプレハブも、状況によっては一時避難が必要になります。

 ガソリンの安定供給、道路の復旧に伴い、保全活動の範囲も広域になってきました。今後、会員および支援者の皆様にご助力をお願いすることも増えてくると思います。1点でも多くの歴史資料を後世に遺すため、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。