115号 水損資料応急処置

救う―救済活動東日本大震災

宮城資料ネット理事 堀 裕

 4月25日(月)、宮城県農業高校の水損資料応急処置と搬出のための活動を行いました。当日は、台風被害の水損資料保全活動の経験がある歴史資料ネットワーク(神戸)のメンバー(4名)による水損資料の保全方法の指導のもと、山形資料ネットワーク(6名)と宮城資料ネットワーク(8名)の参加者によって活動が行われました。

 宮城県農業高等学校は、海岸から約2キロの距離に立地し、津波被害によって校舎・校庭に大きな被害がありました。再建に向けた努力が続けられていますが、現在も津波被害の跡が大きく残ったままです。このような活動場所のため、安全を考え、本格的な処置は東北芸術工科大学で行うこととし、この日は簡単な応急処置と搬出を行いました。

倉庫に乗り上げた乗用車
職員が応急処置した蔵書
汚れを刷毛で落とす

 明治期創立の当学校の資料は、『農業全書』など農業関係を中心に、語学や文学に関する和装・洋装の本が多数あって、搬出時のコンテナ約50箱分にもなるほどです。

 活動の行われた建物の1階に、対象となる資料の書庫があったため、資料は津波の被害を受けました。資料の一部は、先に高校の先生の手によって2階に搬出され、殺菌のためのエタノール噴霧の後、床いっぱいに積まれていました。本には泥がべったり付いただけでなく、一部に水損によると思われるカビがあり、和装本は数冊が接着して離れないものも多くありました。その場の作業は、本を傷めないようにハケや竹串を用い、表面の泥を除いた上で、できるだけ撮影のため題名(外題・内題)や奥付がわかるように泥を除き、番号を書いた付箋を挟み込みます。目録作成のための撮影も行う予定でしたが、時間の関係で先に搬出を行うこととし、応急処置の済んだ資料はすぐにコンテナに納めました。1階では、書庫の床に散乱していた泥まみれの和書を取り上げ、白カビの拭き取りとエタノール噴霧を行った上、陰干しをしています。これらの資料への対応は、ほぼ一ヶ月後になるとの事でした。

蔵書を搬出する
東北芸工大への搬入
蔵書の仕分け作業

 搬出された東北芸術工科大学では、翌日・翌々日にも、応急処置作業が行われています。

 今回、水損資料が短期間で廃棄される可能性のあることを想像させる一方で、水損資料にも保全の方法があり、その具体的方法の一端を学ぶことになりました。