116号 東日本大震災・桃生町での歴史資料保全活動

救う―救済活動東日本大震災

 宮城資料ネット事務局の天野真志です。

 4月27日(水)、石巻市桃生町で歴史資料保全活動を実施しました。対象となったS家は、江戸時代に藩の礼法に携わる旧家でしたが、今回の地震で土蔵が倒壊し、資料の保管が困難となったため、同市文化財保護委員の方からの要請をうけ、事務局が資料の搬出作業をおこないました。

資料の搬出作業

 事務局が現地に赴いた際、すでに土蔵は解体されていました。ただ、古い物を安易に捨てないよう、文化財保護委員の方たちから呼びかけられていたこともあり、蔵のなかにあった資料は、雨に濡れない場所へ一時避難されておりました。江戸時代の礼法や明治期以降の土地所有関係の資料、さらに代々受け継いできた道具類などが多数残されており、一時保管先として東北歴史博物館へ移送しました。また、水損資料については事務局に運び込み、資料ネット会員の協力を得て応急処置を施しました。今回、すべての資料を搬出できなかったため、後日改めて残りの資料を搬出する予定です。

 土蔵の解体に際して、今回のお宅では重機ではなく手作業での解体をおこなったそうです。わざわざ手のかかる解体方法をとったのは、資料に対するご当主の想いによるものでした。
 お宅に残された資料は、古文書類のみならず、江戸時代以来同家で集められた食器類や落雁の型など、この地域の歴史を今に伝える歴史資料でした。ご当主によると、今後これらの資料を残すにあたり、単に古いものを残すのではなく、「地域の思い出」として、地域の方々とその価値を共有しながら残していきたいとおっしゃっていました。

水損資料の応急処置

 歴史の記憶が風化すると、お宅に残された歴史資料も忘れ去られてしまう。それにともない、資料に対する関心も薄れ、せっかく残された資料もやがて無くなってしまう。こうした事態を防ぐために、まずは古いものを残し、その後にそれらを地域で共有することができないものか、というご当主の想いが、多くの歴史資料の保全に繋がったといえます。こうした所蔵者の想いに少しでも応えられるよう、今後も活動を続けていきたいと思いますので、これからもご支援・ご協力よろしくお願いいたします。