152号 宮城資料ネット展示 「地球が震えた日 3.11から 歴史遺産を未来へ」

広める―普及活動救う―救済活動東日本大震災


 宮城資料ネット事務局の佐藤大介です。去る9月17日から25日、震災発生後に実施している被災地での歴史資料保全活動に関する展示「地球が震えた日 3.11から 歴史遺産を未来へ」を、仙台市博物館ギャラリーにて開催いたしました。

 開催の直接のきっかけは、仙台市博物館および市史編さん室のご厚意で、仙台市史講座特別企画「地域の歴史資料を救え」の関連パネル展にあわせ、宮城資料ネットの活動を紹介する機会を得たことです。一方、震災以前から、宮城資料ネット自体の活動記録と広報の必要性について会員のかたがたから提案がありました。そこで、本会会員であるまちのほこり研究所の千葉真弓さんに全体の企画をお願いし、展示を実施する運びとなりました。 また、尚絅学院大学表現文化学科より、展示資材の提供、展示準備および開催中のスタッフについて協力を得ました。(右絵:仙台市博物館での展示全景)

 関係者の皆様のご協力について、記して御礼申し上げます。


 今回は、石巻市本間家土蔵の写真を用いた横断幕や70枚を超える活動の写真、今回の震災でレスキューされた女川町木村家文書の現物3点、さらに文書を収めていた茶箱の実物を展示しました。会期中の来場者は736名でした。

 続いて、展示ボランティアの山下ともさんと、展示企画をお引き受けいただいた千葉真弓さんからのレポートです。(右絵:展示期間中の風景:9月20日)

■パネル展の展示ボランティアに参加して

尚絅学院大学 表現文化学科1年 山下とも

 9月17日~25日に仙台市博物館にて行われていたパネル展『3.11 地球が震えた日』に、学生ボランティアとして関わらせて頂きました。
 
 今回の展示は宮城歴史資料保全ネットワークの2003年からの歩み、および東日本大震災での歴史資料レスキュー活動の紹介ということでしたが、恥ずかしながら私は展示前に頂いた資料で初めてこの活動を知りました。また、展示に関する知識も足りないため、展示の準備や片付けの際は指示についていくのが精一杯でした。そのため、このパネル展にどれだけ自分が貢献できたかは疑問ですが、私にとっては有意義な経験となりました。


 1週間の展示期間中には、約700人の方に足を運んでいただきました。やはり来場者の方の東日本大震災への関心は強いようで、年齢層も年配の方から家族連れまでと幅広い年代の方がいらっしゃったように思います。特に年配の方はじっくりと展示内容を見ていく方が多く、中には30分以上かけて展示を見ていかれた方もいらっしゃいました。(右絵:展示の設営風景 9月16日)

 実際に被災した古文書や茶箱の実物に関心を示す方も多く、じっくりと見ていく方が多かったです。一度展示を見終わった方の中には、資料と一緒に配布したマンガ『漂流茶箱の冒険』を読み、改めて茶箱を見に来る方もおられました。また、小さいお子さんも展示してある写真や、『漂流茶箱の冒険』に真剣に見入っていました。
感想ノートには、宮城歴史資料保全ネットワークの活動に賛同、応援のメッセージが多く寄せられていました。

 今回の展示に関わり、宮城歴史資料保全ネットワークの取り組みはもちろん、展示を行う上での技術や工夫も教えていただき、学芸員取得を目指す私には大変勉強になりました。展示における照明の使い方や、現場で試行錯誤をしながら展示を作り上げていくことなど、実際に展示を作る側に立たなければわからないような経験を積ませていただきました。(絵:今回の展示スタッフ)

   

 私達が過去の人々の生活を知るには、当時の人々の記録を読むしか方法はありません。民家に仕舞い込まれていた古い生活の記録を、文化財としてデジタルで保存することでより確実に未来へ伝えていける。その大切さを、この展示のボランティアを通して教えて頂きました。

 このような企画に関わることができたことに感謝いたします。本当にありがとうございました。

■ 展示制作の千葉真弓から、舞台裏レポートです。

 今回の展示ストーリーの源は宮城資料ネットニュースです。毎号行間から読む人を打つ強い感情が溢れてきます。ニュースの中で、強い光を放って見えたのが女川の漂流茶箱でした(マンガにしてアップしてあります)。この茶箱が今回の展示空間のへそ、象徴です。実物を展示空間の真ん中に置きました。茶箱の中の文書も数点展示されています。


 パネル原稿担当のみなさんには、厳しい文字数制限をお願いしました。文字がいっぱいあると「わーい同じ値段で大盛りだ」と思うのは…。最初にいただいた端正な文章に対しては「もっとバランスを欠いた、感情が吹き出すぎりぎり寸止めで」と普通と逆のお願いをしました。出来たのは誠実と愛情が伝わる文章です。(右絵:展示の「象徴」となった漂流茶箱)

 意義のある展示を制作させて頂き、ありがとうございました。

 自前の展示空間と展示専門スタッフを持たない宮城資料ネットです。今後「うちで展示を」とお声がけ頂けたら即応できるよう、「アマチュアスタッフでも展示が出来る出開帳セット」を鋭意制作中です。


 宮城資料ネットの活動に関する広報の方法について、また新たな経験を得ることが出来ました。その後10月8日・9日に東北大学片平キャンパスで開催されたオープンキャンパス「片平まつり」でも展示が行われています。スペースなど会場の条件に合わせて展示を設置できる強みを早速実感しているところです。内容については今後さらに議論を重ね、また最新の活動を反映させながら、よりわかりやすいものにしていきたいと考えています。

 最後に、今回の展示実施については、あくまでも途中経過を市民に向けて報告している、という認識です。活動はまだまだ続きます。この展示をきっかけに、地域の歴史資料を守っていくための輪が広がっていくことを願ってやみません。(右絵:東北大学片平まつりでの展示)