157号 事務局ボランティア作業に参加して

救う―救済活動東日本大震災

中央大学大学院 北村厚介(山崎圭ゼミ)

 雪の夜空が印象的な去る12月20日・21日の2日間、中央大学大学院山崎圭ゼミ(先生以下計5名)で宮城資料ネット事務局における被災資料保全作業に参加させていただきました。 事務局の天野さんやボランティアの方々から作業を1つ1つ丁寧に教えていただき、皆さんの明るく活気のある雰囲気や様々な配慮をしていただいたおかげで、初めて参加した私たちでも戸惑うことなく和やかに作業をすることができました。


 参加させていただいたのは水損史料のドライクリーニング、除塩作業(「東文救システム」)、殺菌・防黴作業です。 史料を傷つけてはいけない、ということは学部の頃から叩き込まれた「常識」ですが、泥や汚れを刷毛や竹箆などでこそぎ落としたり、水につけて洗浄したり、エタノールを吹きかけたりと、参加したどの作業も少しでも集中を切らせば史料を傷つけてしまうもので、朝から晩までの作業はあっという間に過ぎてしまいますが、終わった後に押し寄せる精神的な疲労は中腰からくる身体的な疲労とは比べ物にならないほど重いものでした。特に史料を水にひたして行う洗浄作業は、史料と液体とを一緒の場に置くことすらありえないという「常識」を持つ私たちにとって躊躇してしまうほどの緊張感があり、中でも濡らした近代の薄い罫紙という何をしても破れそうな史料をそっと、決して傷つけないよう慎重かつ適度な思い切りをもって扱うことは涙目になるほど緊張しました。膨大な被災資料に対して保全作業を行われてきた事務局・ボランティアの方々の労力に敬服するとともに、東日本大震災が「常識」の通用しない非常事態であることを、被災資料の保全作業を通じてほんの一端とはいえ痛感させられました。


 ボランティアの方々と触れあえたことも貴重な経験となりました。私たちを含めて両日とも10名以上の大所帯で、地元の方から私たちのように県外から参加した方、学部生から年配の方まで様々な方々と一緒に作業し、被災時のことやボランティアのきっかけなどさまざまなお話しをさせていただきました。お会いした方のほとんどが複数回参加されている方々で、地元からも遠方からも被災資料保全に継続的に関わっていきたいという姿勢が印象的でした。恥ずかしながら被災資料ボランティアに関わることは初めてでしたが、ボランティアの方々の思いや姿勢に触れ、頻繁に参加することは難しくても、継続的に何らかの形で関わり続けていきたいという思いを強くしました。


 2日間という短い期間ではありましたが、ボランティアの方々と被災資料を救助・保全したいという気持ちを共有しながら、真剣に、和やかに作業し、初日には平川先生の貴重なお話しを拝聴させていただき、とても有意義な経験をさせていただきました。温かく迎えていただいた事務局の方々のご厚意に対して私たちの作業が少しでもお役に立てたことを願うばかりです。ありがとうございました。

■付記

 2012年最初のニュースは、昨年末にボランティア参加していただいた、中央大学山崎圭ゼミ北村厚介さんにご寄稿をお願いいたしました。東京からゼミ単位でご参加いただきましたことに改めて御礼申し上げます。(事務局・佐藤大介)