159号 石巻の旧家での史料レスキューの報告
2012.02.01
宮城資料ネット 斎藤善之
1月29日(日)、石巻市内の北上川に沿った津波浸水地区で、K家の史料レスキューを行いました。K家は江戸時代前期に登米から石巻に移住し、その後、近世を通して当地で町医者をされていたとされ、近代になってからも医院を開業されるかたわら議員を務めるなど地元では旧家として知られる家です。その建物も大きな母屋のほか2棟の脇屋、土蔵と納屋からなり、その規模の大きさと趣のある佇まいから、震災前において石巻千石船の会など地元郷土史家たちも少なからず関心を寄せていた家でした。
3月11日の津波でこの屋敷は、1mから2mに及ぶ浸水に見舞われ、建物の一階床上ははすべて一面の泥に覆われ家具や建具も散乱してしまいました。昨年12月、当家のご子孫の方から私にご連絡があり、この建物はこの3月までに全て取り壊す予定であること、ついては関心があるならば内部のレスキューを実施して欲しいとのお話しをいただき、まずご子孫の方にお会いして内部を見せていただきました。母屋には相当数の襖があり、内部に江戸期から明治頃と思われる下張り文書がみられたこと、そのほかに納屋や土蔵にも古文書がみられたことから史料保全の必要性を確認し、宮城史料ネットと石巻千石船の会の連携のもと今回のレスキューを企画しました。
当日は8名のメンバー有志の参加をえて、午前10時頃から現地で作業を開始し、母屋、納屋、土蔵の探索調査を行い、その結果午後4時前までに段ボールで30箱余、襖など20枚余の保全を完了しました。その多くが水損史料であり、被災から10ヶ月という歳月が経って、固着のうえにカビがひどく、このうちどれだけの史料の復元ができるかははなはだ厳しい状況ですが、史料ネットでまずは今後の処置について検討すべく東北大学の事務局に搬入しました。
当日は数日前の雪が一面に残るなか、この冬一番の寒さという、レスキュー作業としては過酷な環境のなかでの実施となりましたが、これまで経験を積んできた事務局の周到な準備とメンバーの手際の良い作業によって、相当量の史料保全を予定した時間内に完了することができました。ご協力いただいた関係各位には心から感謝申し上げます。