161号 被災史料保全作業に参加して

救う―救済活動東日本大震災

一橋大学大学院社会学研究科  特任講師 佐藤美弥

 2012年2月22日(水)から24日(金)までの3日間、一橋大学大学院社会学研究科から被災史料の保全作業に参加しました。国文学研究資料館の渡辺浩一さんからのご紹介で、社会学研究科の渡辺尚志ゼミ、若尾政希ゼミの大学院生を中心に、古代史から近現代史まで様々な専門を持つ有志がメンバーでした。私個人としては、3月の大震災後、歴史学を研究する者として、何ができるのだろうかと考え、微力ながら行動しながらも、今回の様な作業に参加する機会を得ることがなく、ぜひにと参加させていただきました。

 22日(水)13時、東北大学総合研究棟11階に集合、平川新さんより、宮城資料ネットの活動と保全作業の概要について説明をいただいたあと、作業に移りました。作業内容は、津波被害による水損資料の清掃と選別です。作業の方法は天野真志さんや、長く作業をされている地元の方々にご教示いただきました。
 私たちが担当した史料群は、石巻市住吉町に所在する個人宅のもので、明治期の和紙に墨書された書類から、戦時期の刊本まで、近現代の多様な史料を含むものでした。津波で水をかぶり、泥が付着しているものがあり、被災後10ヶ月ほど放置されていたため、カビが生えているものがあります。また、史料どうしが癒着し、剥離することが困難なものがありました。泥やカビの汚れをヘラ、刷毛の道具を使用して除去し、エタノールの希釈液によってカビの繁殖を抑え、修復が可能な史料と、困難なものを選り分けるというのが一連の作業です。作業を続けると、やはりそれぞれの史料の面白さ、貴重さを感じることとなり、いっそう作業の重要性を認識することとなりました。

   

 2日目、3日目も各自、作業を実施しました。2日目の作業終了後には平川新さんから、宮城資料ネット設立の経緯、活動の経過、そして東日本大震災後の史料救済活動について、また、救済史料を使用した新たな研究成果についてのプレゼンテーションを聴講する機会を得ました。

 作業への参加によって、ほんのわずかの時間ながらなにがしかの貢献ができたという充実感とともに、平川さんはじめ宮城資料ネットの方々のお話を伺い、その熱心さに打たれ、大災害時の対応と同時に、私たちが日常的に接する、史料への向き合い方、保全への意識を新たにする必要を痛感いたしました。参加者それぞれが貴重な糧を得たことと思います。今回はまことにありがとうございました。