164号 被災地での歴史資料レスキュー続く

救う―救済活動東日本大震災

今回は3月後半に各地で実施した被災歴史資料の所在調査とレスキューの報告です。


■石巻市立相川小学校でのレスキュー

 ■石巻市立相川小学校でのレスキュー
 3月23日、石巻市立相川小学校(石巻市北上町)で、同校の学校文書のレスキューを実施しました。

 同校の書類は、石巻市教育委員会の依頼により、昨年8月末に石巻市の他校の書類と合わせて応急処置を実施しました。相川小学校分は31冊の応急処置を行いました。その後、3月10日に、被災した校舎にまだ多くの書類が残されているという情報が事務局に寄せられました。そこで同校関係者の許可を得て対応したものです。

 宮城資料ネット事務局天野真志と会員1名、宮城学院女子大学1名の3名で、段ボール37箱分の文書を仙台市の事務局に搬出しました。早速翌日からクリーニング作業に取りかかっています。


■石巻市雄勝町・T家文書レスキュー

 23日午前9時、相川小学校文書のレスキュー隊が仙台から出発した直後、石巻市教育委員会の佐々木淳さんから石巻市雄勝町T家文書のレスキュー依頼がありました。佐々木さんが現地で300点ほどの近世文書を保全したとのことで、すぐに仙台から相川小学校で活動中の事務局スタッフに電話連絡を取り、この文書も仙台へ搬出することにしました。相川小学校での活動を終えた後、石巻文化センターでつづらや箱などに入った文書を引き取り、仙台に搬出しました。

 震災後一年以上が過ぎているため、文書に中には劣化が進んでいるものもあります。そこで、ひとまず事務局の冷凍庫に保管して経過を観察しています。
 (絵:冷凍保管されたT家文書)

■栗原市での被災資料調査

 3月26日には、栗原市Y家での被災歴史資料調査を、事務局ボランティアの後藤三夫さんが実施しました。同家での活動は、後藤さんが会員である宮城県美術刀剣保存協会が実施している「被災刀剣類レスキュー事業」が1月末に栗原市で相談会を行った際、所蔵者から相談があったことがきっかけです。今回は同家所蔵の歴史資料について概要を確認しました。これまで未確認の古文書が多く、4月以降本格的な保全活動を実施する予定です。

 種類の異なる歴史資料・文化財の被災対応を行う組織同士で情報が共有された結果、新たな歴史資料の所在確認につながりました。


■女川町での被災古文書レスキュー

 3月28日には、女川町教育委員会生涯学習課からの依頼で、同町役場倉庫から発見された近世文書の被災対応活動を実施しました。佐藤と天野が、女川町総合体育館に仮移転中の担当課を訪問し、紙袋一つ分の文書の状態を確認しました。固着は進んでいましたがカビの発生はごく初期のもので、これらについても仙台市に搬出して応急処置を進めることにしました。

 震災発生から一年を経過して、未だに津波被災地で新たな被災史料が確認されるのは、貴重な歴史資料が消滅を免れたという喜びとともに、正直驚きも感じています。状況がある程度は落ち着きつつある中で、改めて史料の存在に意識が向きつつあるということかもしれません。一方、内陸部では公費での家屋解体が比較的遅れており、今後の進み具合によっては、解体建物からの搬出など緊急対応も増えそうです。

 新年度も、引き続き活動への支援をよろしくお願いいたします。(佐藤大介・記)