167号 被災地での活動続く-4月から5月の保全活動
2012.06.01
宮城資料ネット事務局の佐藤大介です。事務局からのニュース発信は3か月ぶりとなります。新年度に入ってからの活動を簡単に報告いたします。
■宮城県石巻市での津波被災史料レスキュー
5月21日、宮城県石巻市のS家で津波被災史料のレスキューを行いました。事務局の佐藤とボランティアの郡山芳昭さんの2名で現地での対応をしました。
北上川河口の海沿いにある同家の古文書は、石巻市史編さん事業で整理されています。昨年3月11日の津波では、二階建ての母屋の一階部分が浸水しました。一方、建物は倒壊や流出まではいたらず、古文書は建物の中に残されました。仮設住宅に避難された所蔵者の方は、昨年末に以前から親交のあった石巻古文書の会の庄司惠一さんに市内で偶然再会し、古文書の対応について相談されました。宮城資料ネットには今年1月に庄司さんからレスキュー依頼がありましたが、他の被災史料への対応もあり、ようやく今回レスキューが実現しました。
(右絵;14か月ぶりに見つかった古文書)
現地では、所蔵者の方が被災した家の中から探し集めた古文書約300点がすでに運び出せる状態で用意されていました。被災から14か月を経過し、一旦海水に濡れた史料は乾いた状態でした。整理封筒の表面には砂がこびりついていました。これらの史料は仙台市に搬出しました。さらに、江戸時代のものと伝わるひな人形も被災した状態で確認されました。これも搬出しています。
所蔵者のお話では、今回のレスキューがきっかけで、震災以来はじめて元の住まいに戻ってきたとのことでした。同様の事情で、被災地に残されたままの歴史資料がまだあると考えられます。情報収集と対応を続けていく必要があります。
(右絵:被災資料の搬出)
■4月から5月の保全活動
上記の件も含め、2ヶ月間で実施した保全活動について報告します。
1 仙台市内寺院での保全活動
4月20日と5月1日の両日、仙台市内の寺院にて個人宅にて保全活動を実施しました。参加者は21日が6名、1日が8名でした。活動では所蔵の近代史料全点を撮影し、中性紙製の保管容器に収納しました。撮影コマ数は10,064コマにおよびました。
(右絵:仙台市内での保全活動 5月1日)
2 宮城県大和町での保全活動
5月2日、宮城県大和町内の寺院で保全活動を実施しました。江戸時代築の庫裏が被災し、その改修工事にともない、ふすまに江戸時代の古文書が再利用されていることが確認されたとのことで、保全の依頼がありました。事務局の佐藤が現地で対応し、歴史資料の所在状況を確認しました。ふすま25枚と、掛け軸類を仙台市の事務局に一時搬出しました。
3 宮城県川崎町での保全活動
4月23日、川崎町文化財保護委員の川崎金治さんが事務局に来訪され、川崎町内での歴史資料所在状況について確認を行いました。あわせて、保管の近世古文書を撮影しました。撮影点数は177コマでした。
5月6日には、この時の協議に基づき、早期の保全活動が要請された川崎町S家での保全活動を実施しました。参加者は5名で、川崎町文化財保護委員3名も参加しました。保管の現状を確認するとともに、中性紙封筒での整理と一部史料の撮影を行いました。多数の古文書史料が確認されたため、活動は継続して実施する予定です。
(右絵:大和町での活動ふすまを取り外す 5月2日)
4 仙台市内被災資料の保全活動
5月11日、仙台市内沿岸部で被災した個人宅の被災文書資料の保全活動に着手しました。この史料は4月末に仙台市史編さん室が被災地からレスキューしたもので、宮城資料ネットとの共同で応急処置と整理を進めてゆくことになりました。
5 宮城県村田町での保全活動
5月14日、村田町Y家から保全のため借用していた江戸時代の古文書を返却するとともに、写真帳を所蔵者と村田町に提供しました。宮城資料ネットからの参加者は3名でした。
同家は東日本大震災での史料が被災するとともに、かつての研究者(個人)が未返却となっていた古文書の返却先でもあります。同家については村田町歴史みらい館が昨年度からレスキュー対応をしておりましたが、その中で史料返却が実現することになりました。返却に際して、被災史料の保全も申し入れたものです。
今回は、村田町歴史みらい館が保全した史料に加え、新たに未整理の古文書が確認されました。所蔵者の了承を得て、仙台の事務局にて整理を行うことになりました。
(右絵:川崎町での活動 5月6日)
6 宮城県石巻市での被災史料レスキュー
5月21日、宮城県石巻市で津波被災史料レスキューを実施しました。詳細は冒頭記事の通りです。
7 宮城県栗原市での保全活動
5月25日、宮城県栗原市のY家で保全活動を実施しました。宮城資料ネットからは3名が参加し、タンスや木箱に収められた多数の古文書を保全しました。
同家の活動は、宮城県美術刀剣保存協会が実施している、東日本大震災で被災した刀剣のレスキュー活動の中で、同協会会員で宮城資料ネットボランティアでもある後藤三夫さんに相談が寄せられたものです。同協会のレスキューは、宮城資料ネットの被災史料レスキューをモデルにしたとのことで、相互交流の成果として実現した活動です。
(右絵:栗原市での活動 5月25日)
8 史料返却事業
5月30日、かつての歴史研究者(故人)が未返却であった古文書資料の内、塩竈市関係の史料2件を、塩竈市役所内の市史編さん室に返却しました。現在判明している57家中、8家分の返却が終わったことになります。