171号 救出された司馬江漢の作品 初公開

救う―救済活動東日本大震災

仙台市博物館特別展「江戸の旅-たどる道・えがかれる風景」にて

宮城資料ネット事務局の佐藤大介です。東日本大震災での被災歴史資料レスキューは今なお続いています。それとともに、救出された史料の本格的な修復、さらに修復を終えた史料の展示も、各地で徐々に始まっています。
9月28日より仙台市博物館で開催の特別展「江戸の旅」では、今年1月29日に石巻市の勝又家旧邸からレスキューされた、江戸時代後期の洋風画家・司馬江漢(1747-1818)の油絵2点が展示されています。
宮城資料ネットが石巻千石船の会の協力を得て実施したレスキューでは、2月に予定されていた家屋解体の寸前に、文書や掛け軸類などを丸一日かけて搬出しました。司馬江漢の作品は、夕闇が迫り、作業が終了する寸前に、板蔵の奥から発見されました。レスキュー活動の詳細は、本ニュース159号をご参照ください。
今回は、仙台市博物館学芸員の坂田美咲さんから、救出後の本格的な修復と、展示に至るまでの経過、さらに作品も含めた特別展の内容についてご報告いただきます。


救出された司馬江漢の衝立
「江之島児淵眺望・金沢能見堂眺望図衝立」初公開

仙台市博物館 坂田美咲
東日本大震災で津波被害をうけた司馬江漢の衝立について、宮城資料ネットを通じて仙台市博物館に照会があったのは今年2月末のこと。資料は司馬江漢自筆の油彩画で、衝立形式は他に類例がない大変貴重なものだった。ご所蔵者は「歴史的な名品は公共の共有財産である」とおっしゃり、翌3月には仙台市博物館に作品をご寄贈なさった。
博物館に受け入れた当時、衝立の脚部分は欠損しており、画面には津波による塩分が浮き出し、一部が剥落した状態だった。また汚れも各所にみられた。博物館では作品を燻蒸したうえで、専門業者に依頼し修復を行った。まず衝立の木枠を解体し、修復前の状態

 (絵 提供・仙台市博物館/3枚共)

修復前の状態
修復後

画面を骨組から外して、裏張りを剥がした。本紙の塩抜きと洗浄をし、剥落した部分の色注しを行った。修復を終えた作品は9月28日より仙台市博物館で開催中の特別展「江戸の旅」で初公開されている。
津波を生き延びた資料を、地域の中で公開すること。そのことは、各地域や家が伝えてきた資料を、地域の共有財産として地域の中で守り伝えていくという意識を広げるために重要なことだと思う。津波や震災で失われた資料は多い。しかし生き延びた資料が災害以外の理由によって失われることをどう防ぐのかという点も今後一層考えていくべき問題だと思う。

ついたての展示風景(博物館2階・企画展示室にて

   

なお、仙台市博物館では今回紹介した衝立に加えて、常設展示でも石巻市で津波から奇跡的に救出された伊達政宗書状2件を展示している。特別展と併せて是非ご覧いただきたい。

■特別展「江戸の旅-たどる道、えがかれる風景-」のご案内
会 期:平成24年9月28日(金)~11月11日(日)
前期:9月28日(金)~10月21日(日)
後期:10月23日(火)~11月11日(日)
*月曜日休館 ただし10月9日(体育の日)を除く
観覧料:特別展料金 一般900円、高校・大学生500円、小中学生200円
主な展示資料(◎印は重要文化財、□は県指定文化財)

◎「五街道其外分間延絵図並見取絵図」(東京国立博物館)
◎「菅江真澄遊覧記」(個人蔵)
□「江戸一目図屏風」鍬形蕙斎筆(津山郷土博物館)*前期のみ展示
増補行程記(もりおか歴史文化館蔵)
お国替絵巻(個人蔵)など
資料総件数255件、見ごたえがありますので是非ご来館ください。


佐藤も早速展示を見に行きました。消滅寸前でレスキューされた史料が、数々の指定文化財とともに展示されている様子は、搬出に関わったものとして感慨深いものがあります。レスキューからちょうど8か月で展示に至りました。仙台市博物館を初めとする関係各位の尽力に敬意を表します。多くの方にご覧いただければと思います。