180号 2012年11月の保全活動

守る―保全活動救う―救済活動東日本大震災

事務局佐藤大介です。連日のニュース配信となりますがおつきあいください。2012年11月の活動報告です。
1 事務局での活動

■被災歴史資料を白石市に一時搬出
これまでの活動で被災地から搬出した歴史資料については、その8割ほどを東北大学東北アジア研究センターのプレハブに一室を借用して保管してきました。しかし、同センターのもとの研究棟が全面改修されることになり、資料をさらに別の場所に移す必要が出てきました。そこで、11月12日、応急処置の終わった資料を中心に、白石市教育委員会博物館建設準備室の文化財保管庫へ一時的に搬出しました。
それでも、資料の保管場所確保は予断を許さない状況が続きます。宮城県など関係者の尽力で、確保に向けて調整を続けています。

 

■被災資料の清掃
被災歴史資料の清掃を継続しています。事務局の冷凍庫に一時保存している資料を取り出し、クリーニングや水洗をおこなっています。
今月は大学生と市民のスタッフに加え、11月16日には東北芸術工科大学竹原万雄ゼミ、20日には東北学院大学菊地慶子ゼミからボランティア支援を得ました。

■栗原市O家文書・書籍類の整理
2008年岩手・宮城内陸地震を契機に保全した、栗原市一迫O家文書の整理を進めています。11月からは、和本類や明治時代以降の書籍および雑誌の整理を始めました。こちらは、被災資料の清掃に来ている仙台市内の大学生やボランティアなど、初心者が中心です。和本ではあってもタイトルは楷書で書かれていることが多く、一般市民でも解読することは比較的容易です。専用の目録記入用紙に手書きで記入していく形で進めました。13日間、延べ113名で、1344点の目録化を終えています。
白石市収蔵庫への搬入(11月12日)
保管の現状(11月12日)
「古文書の読める人の仕事」と思われることの多い史料整理についても、どこまで一般のボランティアが対応出来るのか、模索を続けています。

学生ボランティアによる水洗(11月12日)
O家書籍の目録化(11月26日)

■被災資料の撮影
先月に引き続き岩手県陸前高田市の被災資料を撮影しています。今月はのべ31名で、9133コマを撮影しました。
2 現地での活動

■大崎市・M家史料の保全活動
11月5日と23日に、被災した土蔵などからの史料レスキューを実施しました。詳細はニュース179号をご覧ください。

■仙台市・Y家での史料補修
今年4月に保全活動を実施した仙台市のY家にて、写真帳の提供と合わせ、冊子史料の補修を行いました。綴じ紐が外れていた20冊について、絹糸で閉じ直しました。震災後は保存修復分野とも連携が進み、簡単な補修については、事務局でもある程度対応出来るようになりました。

■宮城県女川町・小学校保存資料の調査
11月16日、本会理事の大平聡さんにより、宮城県女川町立第一小および第二小学校の保存文書の調査が実施されました。大平さんが宮城県内で進めている、統廃合に伴う小中学校保管の歴史的公文書の保全活動です。戦前の文書が保存されていることが確認されました。「河北新報」11月19日付朝刊にて活動の様子が紹介されました。
女川町は中心部や集落が津波で甚大な被害を受けました。地域の歴史資料については、大肝入木村家文書や、東北歴史博物館で燻蒸していた近世文書を除き、極めて厳しい状況だと考えられます。女川町も含め、特に沿岸部では明治時代以降の歴史を明らかにする手がかりとして、学校文書の価値が高まっているといえます。

■岩手県一関市K家史料の保全活動
11月16日、17日の両日、一関市大東町K家での保全活動を実施しました。詳細はニュース178号をご覧ください。

■宮城県加美町・I家史料の保全活動
11月21日、宮城県加美町I家史料の保全活動を実施しました。同家では2008年度と2009年度に撮影を行いました。震災後、地元の方から新しい史料が見つかったとの連絡を受けていましたが、ようやく今回の保全活動となりました。
撮影は佐藤と、一関市K家に続き一般ボランティア2名の参加を得て行いました。土蔵に保管されていたという

O家書籍の目録化(11月26日)
江戸時代後期から明治時代の和本、約50点を撮影しました。
丸一日かかった撮影の終わり、御当主からまだ他の史料があるというお話が出ました。そこで無理を言ってお願いしたところ、両手に一抱えの古文書を持参されました。「先生を信用します。どうぞ持っていって調べてください」という一言は、地元で保全活動をするものにとってはありがたいことでした。それに加え、「当家のの歴史を専門家の方に客観的な立場で明らかにしてほしい」という重い宿題も頂戴しました。
お預かりした文書は、21日により事務局の冷凍庫で燻蒸中です。2週間の燻蒸期間を経た後、整理と撮影に取りかかる予定です。

加美町I家での保全活動(11月21日)
白石市域の村方文書を検討(11月29日)

  
               
■宮城県白石市・遠藤家文書整理事業
宮城県白石市教育委員会博物館建設準備室と白石古文書の会による、仙台藩重臣遠藤家文書の整理事業への支援を、11月29日に行いました。史料整理と合わせ、白石市古文書の会が進めている村方文書の整理と翻刻についての相談を受け、情報交換を行いました。
3 広報活動


■歴史資料レスキュー関連の報告
11月10日に新潟大学で開催されたシンポジウム「新潟県中越地震から東日本大震災へ-被災歴史資料の保全・活用の新しい方法をさぐる-」にて、事務局の蝦名裕一が「宮城県栗原市における歴史資料保全活動-二度の震災をうけて-」と題して報告を行いました。
2012年も残すところあと一か月。まだまだ活動は続きます。
 
新潟での蝦名報告(11月10日)