237号 栗原市N家で史料レスキューを実施

救う―救済活動

 事務局の佐藤大介です。去る3月17日、宮城県栗原市にて個人宅での史料レスキューを実施しました。
 今回のレスキューは、3月上旬の大型低気圧による強風の被害に対する活動です。対象となったN家で、伝来していた文書や道具類、書籍などを保管していた倉庫が、強風による倒木で大破しました。3月11日に栗原市教育委員会からの連絡を受け、15日に状況の確認、17日に仙台からNPOメンバーと東北大学、神戸大学からの協力を得て6名で搬出作業を行いました。
 近代の書籍を中心に、ダンボール約70箱分となりました。これらは栗原市で一時保管場所を確保できない状況だったので、仙台市の東北大学災害科学国際研究所に搬出しました。現在は、搬出したうちの江戸時代の文書や美術品について内容把握を行っています。

 当日の活動については、東北大学大学院の菅井優士さんの参加記をごらんください。

   

◇資料レスキュー活動参加記   栗原市N家での史料レスキュー(2015年3月17日)

 東北大学大学院文学研究科 博士課程前期一年 菅井優士

 先日大学院の講義でお世話になった事務局の佐藤大介氏から、仙台藩重臣のN家の資料レスキューを行うので参加できる人を募っているとのお話を頂き、かねてから資料レスキューの現場活動に参加してみたかった私は、佐藤氏に参加する旨をお伝えし、当日の活動に参加することとなりました。
 今回のレスキューは、庭の木が倒れて半壊した倉庫から外に出した資料を一度災害科学研究所に避難させることが目的です。午前中にN家の御宅に着き、はじめにその資料を保管していた倉庫を見させていただきました。かつてN家の資料を守り続けていた倉庫は倒れた大木によって屋根が粉砕され、無残な姿となっており、資料を保管できるスペースはN 家には他になく、資料は一時的にガレージに置かれてありました。
そのままだと、雨が降ってしまうとすぐにでも資料が濡れてしまう状態にあり、急ぎ安全な場所に避難させる必要がありました。
 早速避難作業が始まり、資料に番号を振りながらダンボールに詰めていきました。活動自体初めての参加であった私は、作業を始める前は少し戸惑うのかと思っていたのですが、思いのほかスムーズに作業を進めることが出来ました。おそらくそれを可能にしたのは佐藤氏による講義の成果が表れたのだと思います。
佐藤氏の講義内容は「地域に残る歴史資料の保存と活用」をテーマとし、宮城資料ネットの活動事例をもとに、どのようにして地域に残る歴史資料を後世に伝えていくことができるのか、この問いかけを中心にして、受講者同士での議論を交えながら見識を深めていきました。その際に、今回のような資料救出の事例も紹介され、その際に救出の一連の作業を学びました。つまり、私にとってこのN家での資料レスキューは今年度の学びを実践できる場でもありました。
 春の暖かな陽射しが差す中、N家での整理作業も午後二時頃には終わり、ダンボールに整理した資料を車に乗せ、災害科学国際研究所に移しました。車から研究室に資料の運搬した際には、当日はN家には赴かず、研究所で他の作業にあたっていた資料ネットの方々も加わり、多くの方の力を借りてその日のうちに作業を終えることが出来ました。
 今回のレスキュー活動は講義では参加することが出来なかった資料の避難作業であったため、とても良い経験を得たとともに、改めて地域の歴史資料を後世に伝えることの重要性を認識することになりました。また、多くの人たちによって歴史資料は守られていることを実感し、私が研究で用いる資料も多くの人の絶え間ない努力によりこれまで伝えられているのだと、改めてその貴重さに気付き、歴史を学ぶ研究する姿勢を省みざるをえませんでした。今後も引き続き、宮城資料ネットの活動に参加していきたいと思っております。拙文ではありますが、以上で私の活動参加記とさせて頂きます。