241号 温泉旅館の古文書展示

広める―普及活動

高橋陽一(東北大学東北アジア研究センター)


 宮城県柴田郡川崎町青根温泉の「湯元 不忘閣」(佐藤仁右衛門家)は江戸時代に温泉の湯守も務めた老舗の温泉旅館です。離れの御殿をはじめとする建物は国の登録有形文化財に指定されています。古文書も多数所蔵されており、宮城資料ネットと東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門、川崎町が協力して調査を進めてきました。昨年7月には、その成果報告も兼ねて、公開講演会「川崎のほこり~ふるさとの歴史と文化~」(上記三団体の共催)を開催しています。
 このたび、佐藤家の古文書の魅力をより多くの方々に知っていただこうと、御殿内での古文書展示を始めることにしました。この春から準備を進め、6月24日に完成しました。ガラスケース3つ分(各3段)のスペースに古文書15点を並べ、解説用のアクリルプレートも作製し、設置しています。古文書は主に江戸時代のもので、仙台藩主が来訪したことなど、青根温泉の江戸時代の歩みがわかる展示になっています。
 展示に際しては、佐藤家の皆様はもちろん、川崎町の方々にもご協力いただきました。青根温泉は蔵王から7キロほどの位置にあり、火山活動による風評被害の影響も受けています。歴史研究や古文書調査のノウハウを活かして、そうした地域に少しでも明るい話題を提供できたのであれば幸いです。また、地域の古文書は、積極的に活用しなければ後世に伝わっていかないと思います。今後もこうした活動を継続していきたいです。
 青根温泉は仙台から車で1時間弱です。もちろん温泉自体も素晴らしく、宿泊もお勧めです。是非お越しいただき、知られざる温泉の歴史をご覧ください。