242号 茨城史料ネットで古文書撮影講座を実施しました。

広める―普及活動東日本大震災

 事務局の佐藤大介です。 平成27年7月1日、茨城大学(茨城県水戸市)にて、茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワークにおいて、古文書史料の撮影講座を実施しました。
 日本の地域社会に大量に残された古文書資料への災害対応の一つに、複製を作成して原本の破損や消滅に備えるという対応があります。一件あたり数万点に及ぶ場合も珍しくない史料群全点を、なるべく短期間で記録するため、一般市民でも取り扱いが比較的容易なデジタルカメラでの記録方法を公表しています。
   (絵:講座の様子) 

 茨城史料ネットば、茨城大学の学生や大学院生を中心に運営されています。「宮城方式」の撮影方法については、インターネットや、同ネットの活動に参加した宮城資料ネットの会員が個別に指導したことがありました。一方、学生が中心であるがゆえの人員の入れ替わりや、正式な機会を通じた撮影方法の共有化の必要性について、茨城ネット事務局の添田仁さんと話し合い、今回の講座を開催する運びとなりました。

 当日は、90分の講義と実技を2回行いました。茨城大学の学生や大学院生、さらに茨城史料ネットに参加している一般市民らに、使用する道具の説明や、史料の形状ごとに撮影に際して注意すべき点などについて述べました。また、今回は宮城で撮影に従事している市民スタッフの伊東幸恵さん、黒田昌弘さん、後藤三夫さんの参加を得て、撮影班ごとに実技を指導してもらいました。私自身の講義の練度が低く、普及に際しての課題も多く見つかりましたが、将来、その多くが地域の文化財保存の担い手となるであろう学生のみなさんと交流する良い機会となりました。茨城史料ネットの皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます。

 (宮城資料ネットスタッフによる実技指導)



 茨城史料ネットは、この7月2日で発足4周年を迎え、1日の講座開始前にはセレモニーが行われました。撮影講座については当初40名ということでしたが、60名近くの参加を得ました。また、合間には茨城史料ネットの事務局での活動の様子について、その一端を知る事が出来ました。大学院生が中心となった運営は、非常に組織だったもので、一般市民と学生による文書整理作業は、、史料を通じた世代間交流の場となっていました。

 個人的な感想ですが、学生の活動や学習の結果、歴史資料が物理的に救出され、直接所蔵者や地域住民の要望に応えている、といった即物的な効果のみを評価すべきではないと思います。世代を超えた人びとが地域の歴史資料に触れ、地域の歴史を学び、現代の社会との関わりを考える場は、歴史資料を通じた文化的な雰囲気を生み出すのに大変重要だということを改めて感じました。その雰囲気を肌で感じた学生のみなさんが、専門職に就くかどうかにかかわらず、社会に巣立っていくことで、先人の遺した歴史文化的な蓄積が活かされる機会や、それを前提とした地域作りの輪が、少しずつ広がっていけばと感じます。むろん、これは茨城の学生の方々より少し早く歴史資料を守る活動に関わっている者の願望です。まずはそれぞれの感性と、出来る範囲で活動を続けていくことを願っています。

 今回、歴史資料によってつながりを生み出す、という部分では、教えられることの多い訪問となりました。引き続き交流の機会を持ち、学びあうことが出来ればと思います。   (絵:茨城資料ネットでの文書整理作業)