280・281号 石巻市「本間家土蔵」近況/宮城資料ネットこの一年

救う―救済活動東日本大震災

 佐藤大介です。この1年も多くの方々からのご支援をいただきましたことに感謝申し上げます。

◇石巻市「本間家土蔵」近況
 3.11での被災から、各方面の修復により保全された、石巻市門脇町「本間家土蔵」ですが、町内会の再生に際して公共の場所として役割を増しつつあります。12月27日には、隣接する場所に、日用品や食品を販売する施設「まねきショップ」が開店しました。
 28日、保全活動の支援に来た東京農工大学高橋美貴ゼミ一行と現地を訪ねました。向かいに建てられた復興公営住宅の入居者などで賑わっていました。杖をついたお年寄りの姿もあり、物を買うだけではなく「お茶っこ飲む場所ができた」と喜ぶ声が強く印象に残っています。

本間家土蔵と「まねきショップ」(12 月23 日)
開店した「まねきショップ」(12 月28 日)

◇宮城資料ネットこの1年
 この一年、通例の活動報告の発信が少なくなってしまいました。謹んでお詫び申し上げます。一連の本間家土蔵と「まねきショップ」(12月23日) 開店した「まねきショップ」(12月28日)にぎわう「まねきショップ」活動について、12月17日・18日に愛媛県松山市で開催された第3回史料ネット集会予稿集として掲載した文章を基にご報告させていただきます。ご協力いただいている皆様に改めて御礼申し上げます。

にぎわう「まねきショップ」

(1)3.11被災歴史資料への対応3.11から5年9か月の間、宮城資料ネットでは95件の被災歴史資料のレスキューを実施してきた。現在も、東北大学災害科学国際研究所における月3~4回程度のボランティア活動により、史料への安定化処置が続いている。被災した小・中学校の公文書や、沿岸部の個人所蔵の史料である。あわせて、千葉県白井市郷土博物館、歴史資料ネットワーク、および宮城県内外の大学より、津波被災資料修復の支援を受けている。

史料クリーニング

(2)史料保全の普及活動
 仙台市・広瀬市民センター(公民館相当施設)において、市民参加による歴史資料保全技術の体験、および所轄地域での史跡調査の活動を、月1度程度の頻度で実施している。
 この活動をきっかけに、新たなボランティア参加者も若干得ている。また、2016年5月には宮城県川崎町で、2016年6月には一関市博物館の依頼により、千厩町公民館を会場とする古文書史料の撮影体験講座を実施した。後者については、地元の古文書解読サークルにより、画像を活用した整理作業が行われている。

広瀬市民センターでの活動

(3)被災地の歴史再生
 2016年8月には宮城県松島町にて歴史講演会を実施した。江戸時代の後期に同地を旅した商人の詳細な紀行文に基づくものであり、今後は国文学研究者、および311被災三県の史料ネット関係者を中心に歴史再生に向けた取り組みを実施していく。入場者は100人を超え、アンケート調査でも被災地の歴史再生における積極的な評価が見られた。2016年11月19日には、津波で被災した宮城県女川町でも講演会を実施した。

(4)他地域の災害支援
 2016年4月に発生した熊本地震では、国文学研究資料館・西村慎太郎氏や福島大学・阿部浩一氏と連携して、熊本史料ネットなど被災地の関係団体への情報提供を中心とした支援を行った。
 また、8月末に発生した台風10号については、文化遺産防災ネットワーク推進本部からの要請で、情報提供を行った。なお被災した岩手県遠野市の図書資料については、事務局のある東北大学災害科学国際研究所/歴史資料保存研究分野と東京文化財研究所が連携して修復支援を行う予定である。

(5)国際交流
 2016年7月末に開催されたICP2016(国際心理学会/4年に1度開催)では、宮城資料ネットの活動を心理社会的支援として検討する臨床心理学者との共同研究を発表した。同年9月5日から12日まではアメリカ合衆国にて、ドレクセル大学(ペンシルベニア州フィラデルフィア市・7日)、オハイオ州立大学(オハイオ州コロンバス市・9日)において、福島県双葉町、富岡町での活動と合わせ、災害における歴史資料保全活動の報告を行い、現地の研究者・学生と交流会した。

アメリカ・ドレクセル大での研究会

◇一年を終えて
 3.11への対応は、終わったわけではありません。未だ膨大に残された津波被災資料を、無償ボランティアで許される労力・補修対応の範囲で、淡々と処置し続けています。
 被災地や所蔵先に行っての保全活動は、「目立つ」活動ではあります。しかし、大災害への対応は、目下の消滅の危機を回避した後に果てしなく続く安定化処置こそがその本質だということなのでしょう。「スピード感」が至上の目標とされがちな昨今、持続性を支えるための条件をどのように確保していくか、模索が続きそうです。
 また、個人的には、被災した人・社会の再生における歴史文化の役割について、関連分野や、海外の研究者と議論する機会を得ました。その中では、「地域の活性化」にとどまらない(それ自体も大事なことですが)「再生」の多様なあり方について考えていく必要があるということを学びました。「文化財は後回し」論を超えた固有の役割を見出し、史料ネットの関係者が目標にしている、歴史文化を基礎とする社会作りの一歩になると考えます。

 皆様におかれましては、引き続きのご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。どうぞ良いお年をお迎えください。