58号 栗原市栗駒で資料保全を実施しました

2008岩手・宮城内陸地震救う―救済活動

■栗原市栗駒で資料保全を実施しました(7月12日)

 去る7月12日(土)に、栗原市栗駒文字地区のS家で資料保全を実施しました。文字地区は6月29日に被災状況調査を実施した地域ですが、数軒のお宅から歴史資料が発見されておりました。数量の少ないお宅では被災調査当日に、史料の表紙を撮影し、中性紙封筒に収納する措置を取りましたが、史料数の多いお宅は第2次調査で実施することにしておりました。
 12日に実施したお宅は、内陸地震で土蔵2階の棚からツヅラ2箱が転がり落ちこなければ、ご当主もその存在を知らなかったということです。その土蔵は築三百年という、折り紙付きの旧家です。
 ツヅラ2箱でしたので大動員をかけるほどではないということで、事務局周辺で人員を確保し、4人で現場に向かいました。地元からは栗原市文化財保護課および栗駒史談会と栗原郷土史研究会のそれぞれの会長さんが参加されました。デジタルカメラ4台で写真撮影を行い、ご当主も手伝ってくださいました。撮影をしながら、史料の記事にまつわるいろいろなお話しをご当主や会長さんたちにお聞きしますと、史料が生き返ってくるようです。明治から昭和初期にかけての溜め池築造や水利関係、養蚕・炭焼きに関する史料など、約400点の撮影を済ませました。同地区の近代史を解明できる史料群でした。

■「岩手・宮城内陸地震に関するシンポジウム-1か月後に分かってきたこと-」

 7月14日(月)に表記のシンポジウムが開催され、「地震災害から文化財を守る」と題して宮城資料ネットの活動を紹介しました。主催は、東北大学防災科学拠点グループ、グローバルCOE(変動地球惑星学の総合教育拠点)、工学研究科災害制御研究センターです。
  同シンポでは22分野からの報告があり、地震メカニズム、断層、地滑り、建物被害、土砂ダム、救命・救急、緊急地震速報、文化財保全など、幅広い分野におよびました。ほとんどが理系の報告のなかで、唯一、文化財保全の報告が文化系からなされました。なお、主催の一つである東北大学防災科学拠点グループの代表世話人を平川が努めております。

■宮城県内の歴史資料所在リストの作成を進める

 今回は地震学者も想定外の内陸型地震でした。私たちも、当該地域の歴史資料所在リストは築館地区(旧築館町)だけしか作成しておりませんでした。そのため、地震発生当日からすぐに被災地の所在リスト作成に着手し、これまでに栗原市(合併前9町1村)、大崎市(旧1市6町)の第1次所在リストを作り上げました。現在は、このリストを地元文化財課と郷土史団体に提供し、データの精度を高めていただいているところです。
 この作業と並行して、より被害が大きいと予測されている、本命の宮城県沖地震に備えた所在リスト作りにも取り組んでいます。今回も地震発生後にリスト作りに入らざるをえませんでしたので、発生前に宮城県全域の所在リストの必要性が痛感されたからです。週2回ほど、有志の院生のご協力により、作成作業を進めております。
  (平川記)