68号 資料返却事業・返却がはじまりました
2009.07.09
■資料返却はじまる
宮城資料ネットでは、2007年2月のNPO法人化後の事業として、かつてある大学教授の方が、宮城県および岩手県南部の旧仙台藩領にある旧家から借用したままになっていた古文書資料の返却を、御遺族に代わって行うことに取り組んでおります。
作業は、当該の資料の撮影からはじめ、2007年度には撮影を完了しました。2008年度からは画像データを用いて詳細な目録を作成しておりましたが、6月14日の岩手・宮城内陸地震への対応のため、事業は中断を余儀なくされました。その後、今年に入り目録作成作業を再開し、50件ほどの史料群を確認できました。これらのうち、現在の所蔵者が判明したものから順次返却をはじめることとなり、7月5日および8日の両日、最初の返却を始めました。5日が事務局2名と会員1名、8日は事務局2名に加え、返却に際して一関市博物館に仲介をお願いしておりましたので、同館の職員2名の方とともに、各家を訪問いたしました。
今回返却を行ったのは、5日が栗原市のM家、8日が岩手県藤沢町のS家、同一関市のT家です。S家を除いて、御当主は代替わりされておりましたが、いずれのお宅でも、今回の返却を大変喜んでくださいました。宮城資料ネットの立場は、返却を代行しているというものであるとはいえ、実際の返却に際しては、所蔵者の方たちからの厳しい反応も覚悟していただけに、正直安堵しております。
一方、いずれのお宅も、これまで大学の研究者や史料保存機関などによる調査が実施されていました。しかし、返却に際して史料の所在を確認したところ、未整理の古文書が多数保管されていることが、新たに確認されました。これらの資料については、改めて宮城資料ネットとして、今後の資料保全を実施させて欲しい旨を申し入れました。いずれのお宅からも、ご了解をいただくことができました。
M家については、柳行李1箱ほどの資料を、御当主のご了解をえて史料を借用し、仙台の事務局で全点撮影と中性紙封筒への袋詰めを行うことにしております。なおM家は、岩手・宮城内陸地震で、築200年ほどの母屋や土蔵がかなり破損している状況でした。土蔵の中にもまだ何かあるかもしれないが、地震で蔵のとびらを開けることが出来なくなった、というお話しでした。
また、S家・T家については、一関市博物館と共同で保全活動を進めることになりました。T家については、一旦史料を返却した後、そのまま一関市博物館にお預けいただくとともに、残りの史料についても順次博物館で受け入れ、保全処置を施す予定です。
一方、S家については、御当主の御許可を得て土蔵を確認したところ、緊急の保全活動が必要な状況であることが判明しました。こちらにつきましては、8月上旬を目途に、本格的な保全活動を実施する予定です。日程など詳細が決まりましたら、メールニュースにて案内する予定です。御協力の程、どうぞよろしく御願い申し上げます。
■栗原市での歴史資料保全活動
5月17日に保全活動を実施した栗原市のG家で、土蔵から新たに資料が見つかったとの御連絡をいただき、7月5日に第二次の保全活動を実施しました。近代の文書資料数十点と、掛け軸類、さらには近世の甲冑などの道具類が確認されました。このうち文書類については、御当主の御許可をいただいて借用し、仙台の事務局で全点撮影と中性紙封筒への収納を実施することにしております。(佐藤記)