97号 大地震より2週間

救う―救済活動東日本大震災

 宮城資料ネットの平川新です。3.11大地震から2週間が過ぎました。被害者の数は増え続けるばかりです。

■宮城資料ネットの動き 

*宮城県および文化庁と、歴史資料・文化財の救済体制の構築について検討しております。それにあたり文化庁は、「東北地方太平洋地震文化財等救援事業」として「救援実行委員会をおき、指定文化財・未指定文化財を問わず救済対象とすることを表明しました。文化庁からの協力要請は文化財保存修復学会、全国美術館会議、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)ほかの歴史・美術関係諸機関に行われるとのことです。呼びかけ対象はさらに拡大していくものと思われますので、みなさまにはぜひご協力をお願いしたいと思います。

*現在、私たちのところには全国からレスキューの応援に駆けつけたいというメールがたくさん届いております。しかし今はガソリンの入手もままなりませんので、お待ちいただくしかありません。今後の段取りとしては、歴史資料・文化財等の被災状況を確認したうえでレスキューや保全が必要な物件や個人宅を特定し、さらに地域ごとにスケジュール化して人員の派遣等を調整していくことが必要になります。そうした段階で皆様に人員の派遣やご参加を呼びかけることになろうかと思います。

*レスキューは個人蔵のものだけではなく、公的な資料保存機関等も対象になりす。気仙沼市立のリアス・アーク美術館や南三陸町の郷土文化保存伝習館などは高台にあるので浸水していない、という情報もあります。しかし海岸沿いにあった石巻文化センターは、巨大な津波にのみこまれてしまいました。空中写真を見ますと、周辺の住宅は跡形もなく破壊されて流出し、同センターと隣の市立病院の鉄筋コンクリートの建物しか残っておりません。先日、市立病院の内部が破壊されている映像が流れていましたので、同センターも同様なのではないかと思われます。じつは同センターの職員には、安否をまだ確認できていない方々がおられます。無事に避難されていることを祈るばかりです。

 同センターは市域の古文書等のほかに、石巻在住の故毛利総七郎氏が70年をかけて収集した数万点におよぶ毛利コレクションを収蔵しておりました。現地に入ってみないと、これらがどうなっているのか確認のしようがありません。もし、いくらかでも歴史資料や文化財が残っていれば搬出したいと考えております。これは沿岸地域にある個人所蔵者宅も同様です。

*このように、津波災害によって膨大な水損資料が発生していると思われます。そこで先般、県文化財保護課に、救出した水損資料の一時保管場所として、急速冷凍施設のある水産会社や冷凍食品会社などに協力を求めてくださるよう依頼をしました。確保できるかどうかはわからないが探してみる、とのご回答をいただいております。もし確保できれば、東北歴史博物館には真空凍結乾燥機がありますので、レスキューした水損資料は順次同館に移送して保全することになると思います。

■津波浸水域図

 津波浸水域図を宮城資料ネットのホームページにアップしています。地震後に国土交通省が撮影した空中写真をもとに、宮城資料ネットスタッフの蝦名裕一さんが地図ソフト「カシミール3D」を使って作成しました。 国土地理院も津波範囲概況図を公表していますが、当資料ネット作成図は等高線1mごとに色分けしておりますので、浸水域と地形との関係を明瞭に読み取ることができます(拡大して御覧ください)。全体としてほぼ海抜2mレベルまでは浸水し、場所によっては3~4mあたりまで到達していることがわかります。ご利用ください。