192号 文化庁長官より感謝状授与
2013.04.10
2013年1月~3月の活動 事務局の佐藤大介です。仙台市の事務局における活動を中心とする報告について、月報ペースでの配信を目指す旨お伝えしました。しかし諸事に取り紛らせ、気がつくと4月も10日に。2013年も、早くも四分の一以上が経過しました。あらためて、2013年1月から3月までの活動報告をお送りします。
1 文化庁長官より感謝状を授与
東日本大震災における被災文化財の救援・修復活動に対し、3月25日付けで近藤誠一文化庁長官より感謝状が授与されました。一連の活動については、多くの方々の支援によるものです。改めて御礼申し上げます。一方、今なお被災した歴史資料への対応は続いております。引き続きのご支援をよろしくお願い申し上げます。
2 事務局での活動
◇被災歴史資料への応急処置
昨年から今年前半にかけて、石巻市など津波被災地で救出した個人宅の被災文書史料へのクリーニングや応急処置と、ふすま下張り文書の解体を進めています。被災ミュージアム復興事業によるボランティアに加え、東北芸術工科大学竹原万雄ゼミ、その他全国各地からのボランティア参加を得ました。参加人数は、1月が延べ113名、2月が同132名、3月が同209名でした。
◇デジタル撮影作業
被災歴史資料の応急処置の進捗状況の兼ね合いもあり、この期間は財団法人斎藤報恩会所蔵史料の撮影作業を進めました。3か月間で延べ117名が参加し、斎藤報恩会収集分29055コマ、同常盤文庫分(財団への寄贈史料)30776コマを撮影しました。斎藤報恩会収集分については、補完撮影が遺っていますが、2月15日に一旦全点を完了しました。2年前の3月11日は、この文書群の撮影作業中、震災感謝状を囲んで記念撮影(3月26日)被災歴史資料のクリーニング(1月9日)が襲いました。その作業の完了については、個人的には一区切り付いたような思いがしています。
3 デジタル撮影・「管理編マニュアル」の公開撮影作業におけるファイル管理のマニュアル「歴史資料保全活動におけるデジタルカメラによる文書資料撮影の手引き・画像データの集約・管理編」初版を、1月24日に公開しました。多数のデジタルカメラを用いた現地での撮影作業を前提に、失敗画像のチェックや、デジタルデータ管理の基本である「常に2箇所以上にデータを保存」しながら作業を進めるための効率的な方法についてまとめたものです。少し文字が多いですが、今後さらに改訂していきたいと思います。
事務局での集約作業は、目下の処佐藤が担当しています。失敗をすぐ確認出来るのもデジタル撮影の強みですが、多いときで一日3000コマを越える撮影画像のチェックは、それなりの重労働です。しかし、特に個人所蔵の保全については、失敗を放置したまま、もし原史料が失われれば、二度と再撮影は出来ません。また作業過程からバックアップを考慮しておかないと、機器の故障が発生した場合、数千点の画像を一挙に失うことにもなります。その意味で、デジタル撮影において重要な意味を持つ作業工程だといえます。(撮影マニュアルへ)
4 被災地・各地での保全活動
以前のメールニュースにて詳報をお送りしたものも含め、1月から3月までの被災地および地域での保全活動について、改めてまとめてお送りします。
◇1月10日 宮城県白石市・仙台藩重臣遠藤家文書整理事業の支援
*事務局・佐藤が、白石市教育委員会博物館建設準備室および白石古文書の会による整理事業を支援しました。
◇1月21日 宮城県村田町・Y家史料の返却
*事務局・佐藤と、本会会員の高橋陽一さん(東北大学東北アジア研究センター)の2名で、同町教育委員会の石黒伸一朗さんの立ち会いのもと、撮影の完了した同家文書を返却しました。あわせて補完撮影を実施しました。
◇1月30日 宮城県気仙沼市・K家文書のレスキュー
*事務局・佐藤、天野と、本会会員の高橋陽一さんにて、所蔵者から持ち込まれた津波被災古文書資料の受入を行いました。
◇2月5日 宮城県栗原市・M家史料のレスキュー(第1次)
*2月5日及び9日のM家文書レスキューについてはニュース186号を参照。
◇2月8日 宮城県石巻市・K家史料レスキュー、同氏Y家での被災状況調査
*詳細はニュース185号を参照。デジタルカメラでの撮影作業(3月11日)気仙沼市K家被災史料への対応(1月30日)
◇2月9日 宮城県栗原市・M家史料のレスキュー(第2次)
◇2月12日 宮城県山元町での町民向け古文書説明会
*事務局・佐藤が東北大学東北アジア研究センター高倉浩樹准教授らによる被災した民俗芸能の調査・復興支援事業を支援し、津波で消滅しコピーのみが遺った「中浜天神」の由緒に関する報告を行いました。
◇2月27日 宮城県白石市・仙台藩重臣遠藤家文書整理事業の支援
*1月の活動と同様、事務局・佐藤が、白石市教育委員会博物館建設準備室および白石古文書の会による整理事業を支援しました。
◇3月6日 宮城県栗原市・M家文書のレスキュー(第3次)
*事務局・佐藤が、仙台市博物館水野沙織学芸員の支援を受け、被災した史料を同博物館に一時搬出しました。
◇3月7日 宮城県石巻市・A家での被災状況調査
*斎藤善之理事(東北学院大)、事務局佐藤、天野の3名で状況確認調査を実施しました。
◇3月19日 京都造形芸術大学(京都府京都市)での被災歴史資料状況確認
*事務局・佐藤と天野が、京都造形芸術大学大林賢太郎教授に委託して実施している被災歴史資料の修復作業の状況について確認しました。
◇3月27日 宮城県白石市・仙台藩重臣遠藤家文書整理事業の支援
*1月、2月の活動と同様、事務局・佐藤が、白石市教育委員会博物館建設準備室および白石古文書の会による整理事業を支援しました。
◇3月29日 宮城県丸森町・O家での所在確認調査
*事務局・佐藤が所在確認調査を実施しました。
◇3月30・31日 岩手県一関市・K家での保全活動
*事務局・佐藤とボランティア2名が、一関市芦東山記念館などと共同で、同家所蔵の古文書史料の概要確認調査を実施しました。
5 文化財レスキュー事業・公開討論会への参加
1月25日、2月5日、2月22日に東京国立博物館平成館で開催された公開討論会「被災文化財救援活動について考える会 語ろう!文化財レスキュー ―被災文化財等救援委員会公開討論会―」において、事務局の佐藤(1月23日、2月22日)と天野(2月5日)がパネラーとして参加しました。各回において、会場の参加者も交え活発な意見交換を行いました。なお討論会の模様については報告書としてまとめられる予定です。
このほか、3月2日に岡山市で開催されたシンポジウム「被災地フォーラムin 岡山『大規模自然災害に備える―災害に強い地域歴史文化をつくるために―』」に、理事長の平川がコメンテーターとして参加しました。